大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした


瞬の家は豪邸というより、沖田一族が住んでいる三階建ての複合ビルのようだった。

「大きい……ここがご自宅ですか?」

車の中から見上げるとかなりの大きさだ。

「俺のというより、じいさんたちを含めて三世代が住んでいるからな」
「でも、お母さまはお亡くなりになったんじゃあ……」
「ああ。俺が育った横浜の家は母方の祖父母の家だ。父は再婚しているし、ここには父方の祖父母が住んでいる」

恵まれているようで、瞬も複雑な生い立ちのようだ。

「姉がひとり。もう結婚してアメリカにいるよ。義理の母には子どもはいない。作らなかったんだろうな」

相続がややこしくなるから再婚した父たちに子どもはいないという。
瞬の口ぶりでは、義理の母と上手くいっていないようだ。

父親が後妻とふたりだけで住んでいるという一番大きな三階建ての部分に、祖父母が住む離れと瞬の住む二階建ての建物が組み合わさっているような複雑な形だ。
有名な建築家が手掛けたそうで、斬新なデザインだった。
ブルーとグレーでまとめられているので昼間の明るい時間にはモダンに見えるだろうが、夜の八時過ぎようかという時間だと黒っぽくて荘厳な雰囲気だ。


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