大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
瞬は車を地下のガレージ入れた。
詩織はすぐにあの赤いスポーツカーが目にはいった。
ここにはざっと見ただけで六台は車が止められているし、まだ数台は止められそうなスペースがあった。
やはり車にはこだわりのある一族のようだ。
「こっちだ」
瞬に連れられて建物の中へ入り、玄関から廊下を抜けるとぐっと明るい空間が広がっていた。
リビングの天井が高いせいか、開放的で気持ちがいい。見上げると天窓があって空が見える仕掛けだ。
今は暗いが、昼間ならうんと太陽光が入る部屋だろう。
上ばかり見ていたら、瞬に笑われてしまった。
「ソファーにぶつかるぞ」
シックなベージュの皮のソファーとガラステーブルが部屋の中央に置いてある。
リビングのすぐ横がオープンキッチンのようだ。
瞬が自分で冷蔵庫を開けてボウルやパックを取り出しているのが見える。
「家政婦がいつも作り置きしているんだ。好きなもの食べるといい」
「あ、私がやります。温め直せばいですか?」