大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
大学は、姉の手助けになればと健康福祉学部に進んだ。
勉強して理学療法士の資格も取れたし、将来的にはリハビリテーションもできるスポーツレーナーになれたらと思っている。
近ごろでは姉のツアーに同行することも増えたし、大学時代に知り合った高橋恭介が経営するスポーツジムからの依頼でパーソナルトレーニングを受け持つこともある。
『輝いている人をサポートすること』それが、詩織のモットーだが、両親は詩織がトレーナーになることには難色を示していた。
『うちの病院を継いで欲しい』
両親は父が院長を務める近藤病院の跡を詩織に継がせたいと思っているようだ。
でも、詩織にその気はない。
親子で揉めたくないから、週に数回だけ病院のリハビリテーション室で働くことで誤魔化していた。
(逃げているだけかもしれないけど)
彩絵がテニスを続けていくなら、両親の願いも無視できない。
いつかはキチンと話そうと思いながら、詩織にその勇気は湧いてこなかった。