大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした


「そうなればいいね」

幸せそうな姉に言葉をかけながら、詩織の心はズキズキと痛んだ。

(私とは遊びだったんだわ、きっと)

パーティー会場で彩絵が瞬に向けるのは、恋しい人への熱いまなざしだった。
今も彩絵にしては珍しいくらい、はにかんだ表情を見せている。

ふたりの結婚が決まったら、姉が瞬と並んでいる姿を『家族の一員』として見なければならないと思うと辛い。

「お茶、ごちそうさま」
「もう帰るの?」

笑顔が崩壊する前に、詩織は家から離れることにした。

「お母さんによろしく。当日ホテルでねって伝えておいて」
「了解。お見合い、頑張って!」

心から詩織の見合いが上手くいくように思ってくれているのだろう。
彩絵はガッツポーズをして『応援している』という気持ちを前面に押し出している。

「ありがとう。頑張るね」

微笑み返しながら、詩織の心は複雑だった。
自分らしく生きたいと願いながら、結局は両親が勧める相手とお見合いして結婚するのだろうか。

(それが一番家族、いいえ、姉と上手くいく方法なのかな)

迷いながら、詩織は見合い当日を迎えた。


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