大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした


悠斗は、顔のパーツが大きくて華やかな佳奈子とはあまり似ていない。
切れ長の目と固く結んだ唇が誠実そうな男性だった。
ただ話し方はざっくばらんで、いかにも体育会系の整形外科医らしい。
がっしりした体格だから、ラグビーをしていたというのもうなずける。

コーヒーを飲みながら四人で家のこと、仕事のことなどお互いに情報交換のような会話が続いていく。

(私より五歳年上だから、沖田さんと同い年なんだ)

瞬の方が落ち着いていて年上に見えるのは、会社を背負う責任感が強いせいだろうか。

話し声は瞬の方がよく通るなと思った瞬間、詩織の意識がゆらいだ。
悠斗が目の前にいるのに、瞬のことばかり考えているのだ。

(イヤだ。私ったら、なに考えているの)

見合いの席で瞬を思い出すなんて、どうかしている。
こんな気持ちで目の前の人と結婚できるのだろうかと、不安になる。

(毎日この人と生活するの?)

朝起きて、ゴハンを食べて仕事に行って……。
夜は一緒に眠るのだ。

詩織は思わず身震いした。

(覚悟していたのに……)


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