大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
「あの、方向が……」
しばらくたって気がついたのか、詩織が不安げな声をあげた。
道が違うと言いたげだが、すぐに口を閉じてしまった。どこへ行くのかわかったようだ。
やがて車は沖田家に着くと、駐車場に飲み込まれるように入っていった。
「着いたから、降りてくれ」
自分が先に下りて、助手席のドアを開けて詩織を促す。
詩織のマンションに送ると言っておいて、瞬は自宅に連れてきてしまった。
あんな切ない声で話す詩織を、ひとりで住むマンションに帰したくなかったのだ。
『助けてくれ』とでも言っているような、悲しい声だと瞬は感じてた。
のろのろと詩織が足を降ろす。
見かねた瞬は、いきなり詩織に手を伸ばして引き寄せた。
「あっ!」
そのままドアを閉めて、詩織を車に押し付けるようにして唇を奪った。
激しく熱いキスを瞬が仕掛けると、詩織もおずおずと唇を開いた。
それからはもう止まらない。
ふたりの情熱がおもむくままの大胆なキスだった。