大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
そのまま、ふたりは瞬の家になだれ込むようにして入っていった。
キスは止まらない。
靴を脱ぐのももどかしいし、詩織のバッグやコートはそのあたりに落としていく。
瞬が廊下を少し進んでから木製のドアを蹴るようにして開けた。
深いブルーのカーテンとベッドカバーが深海を思わせるような寝室だ。
瞬は詩織の身体をベッドに横たえると、覆いかぶさった。
「詩織……君が欲しい。いますぐ」
「あ……」
瞬はそっと詩織の耳元に囁いた。
「君も求めているはずだ。あの日からずっと、俺を」
「沖田さん、でもあなたは姉の……」
「彩絵? どうして彼女が関係あるんだ?」
詩織が姉の名を出すのがまどろっこしかった。
きっと詩織も俺たちのありもしない噂を聞いているのだろう。
だが、自分の腕の中にいるのは詩織だ。抱きたいのも詩織だ。
初めて会った日に感じたものを、ずっと確信が持てないまま過ごしてきた。
この前キスをして、やっとわかったのだ。
自分は詩織が欲しかったのだと。詩織も同じ気持ちのはずだと。
(もう、踏みとどまれない)