大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
新しい日々
九州の阿蘇山を望む小さな町。
詩織は今、この町でフリーの理学療法士として働いている。
町営の病院で働く日もあれば、整体院からの依頼で仕事をする日もある。
土地柄から高齢者が多いし、近くの温泉に長期滞在している持病を持つ患者さんもいるからなかなか忙しい毎日だ。
脳血管障害の後のリハビリテーションが主な仕事だが、時にはケガをしたスポーツ選手の手助けもしている。
今は十月。
秋が深まり始めていて、一面のススキの原っぱが雄大な阿蘇のすそ野に見られる。
町にある大イチョウが色付き始めて、もうすぐ見頃を迎えるだろう。
あの凍える冬の朝から、もう三年近い月日が流れていた。