大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
瞬と彩絵の話を聞いていた義母も、顔色をなくしている。
「え? え? どういうことなの?」
話の流れが理解できないのか、義母はおたおたと彩絵と瞬を見比べている。
「お義母さん、彩絵と一緒にこの部屋から出ていってください」
うろたえている義母には、これ以上なにも話したくなかった。
もちろん、彩絵に言われた言葉も信じがたい。
(理学療法士だった詩織がケガを嫌がるとは思えない)
真実を教えてほしいと切実に思った。
今の瞬には義母も彩絵も、誰も信用できないのだ。
(意識が曖昧な時に、なにが起こっていたのだろう)
焦っても、まだ瞬の身体は思うように動かない。
すでに事故から時間が経ってしまっているから、なにから手をつければいいのか判断がつかなかった。
やっと事故の日に会う約束をしていた拓斗に確認すべきだと思いつく。
瞬のスマートフォンは見当たらないので、病室内の電話から拓斗の働くガソリンスタンドに連絡した。
「拓、俺だ」
『し、瞬なのか?』
拓斗は半信半疑だったようだが、すぐに泣き笑いのような声になった。
「やっと話が出来るようになったんだ」
『よかったあ~。病院に行っても会わせてもらえなくて困ってたんだ』
瞬が会いたいと頼むと、拓斗は仕事中だろうにすぐに病院へ駆けつけてくれた。