ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
「マルのおかげよね」
「シアも頑張ったもんね」

 このところレース編みにいそしんでいたのは、このためだった。レースは高価な品だが、自分で作ればいくぶん安くできるというわけである。

「――じゃあ、僕は隠れているから。なにかあったら呼んで」

 マルが隠れたのは、シアが座る椅子の陰である。そもそもそんなに身体が大きいわけでもないので、隠れるのも簡単だ。マルの存在そのものまでは公にしていないから、必要以上に広めない方がいいだろうという判断だ。
 離宮の扉がノックされ、シア自ら出迎える。聖女の衣を身に着けた女性が出てきたのに、相手は驚いたようだった。

「いらっしゃいませ、お話をうかがいましょう」
「お目通りを許してくださり、感謝いたします」
「いえ、これも私の仕事ですから――さあ、どうぞ」

 今日、この離宮を訪れたのは、王宮による審査をクリアし、シアとの面会を許された貴族だった。王宮に上がることができるのはそもそも貴族だけなので、まずは貴族を相手にすることになる。
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