ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 うん、とイドリスは笑った。十回繰り返していた人生では見ることのなかった、彼の微笑み。それは、どこか痛みをこらえているようなものであった。

「セアルド王国の呪われた聖女――僕の友達」

 話を聞いてみると、イドリスの記憶はシアのものとは少し違っているようだった。
 シアの場合は、十八で死んだ直後、十二歳に戻っていた。
 イドリスの場合は、明確に巻き戻ったという記憶があるわけではなく、あの時はこうだった――と、時々頭に思い浮かぶらしい。
 彼の記憶の中のシアは、毎回十八の誕生日で命を落としていたそうだ。それは、シアの記憶とも合致する。

「いつも君と文通しているんだけどさ、ぎりぎりになってから思い出すんだ。ああ、君はもうすぐ死んでしまう。君を助けるにはどうしたらいいんだろうって――そして動き始めるとすぐ、君の死を知る」
「――そんな」

 ルイダーン王国で過ごしている時、話をしようとも思ったけれど、シアに話してしまっていいものか迷っていたらしい。だって、今までイドリスは間に合わなかったから。

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