ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 厨房でココアを用意し、居間に招き入れたアンセルムに運ぶ。
 カップの熱を手に移そうとしているみたいに、受け取ったカップを両手で持ったアンセルムは、ほぅと息をついた。
 シアのところに押しかけてはきたものの、なにを話せばいいのかは本人もまだまとまっていないみたいだ。カップを手で包んだまま、しきりに視線を上げては落とすのを繰り返している。

「――シアお姉様は、聖女なんですよね?」
「ええ、そうですよ?」

 なんで、この期に及んでそんなことを改めて問うのだろう。
 シアについては、アンセルムも話は聞いているだろうに。

「――僕の母のことについて、なにか聞いていませんか?」
「え? それは」

 思ってもみなかった問いを投げかけられて、どう返せばいいのかわからなくなってしまった。だって、エドはアンセルムには真実を告げないと決めている。
 イリア元王太后は、病気が悪化したため、空気のいいところで養生しているというのがアンセルムに伝えられた話のはずだった。

「だっておかしいですよね? シアお姉様がここにいるのに、わざわざ遠いところに追いやるなんて」
「ええと、それは」 

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