ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 たしかに病気の治療をするのなら、ここにいるのが一番いい。シアの作るポーションを飲んでいれば、たいていの病は問題なく解決する。
 アンセルムがそこに気づくのは、もう少し先のことだと思っていたのに。
 うろうろと視線を彷徨わせるシアの前で、アンセルムは深々とため息をついた。それは、彼の年齢にはふさわしくないもの。

「アンセルム様?」
「どうして、僕にはなにも言ってくれないんですか。僕の母上のことなのに」

 どうしよう。完全にシアの手には余る案件だ。
 もちろんシアは、イリアの事件についてはよく知っているけれど、エドがアンセルムには話さないと決めたのに、部外者であるシアがよけいなことを言ってしまっていいものかどうか。

「――シアお姉様、僕は知ってるんです。母上は、悪いことをしたのでしょう? だから、遠いところに行かねばならなかったのでしょう?」

 ああ、と思わず呻いた。
 アンセルムはまだ幼い。幼いけれど、シアやエドが考えているよりずっと深く鋭く物事を見通している。多分、エドが思っているよりもずっと。

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