ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
「もし、それでもだめだったら……?」
「だから、その時はその時です。どうしてもだめなら、アンセルム様の記憶を消しちゃいますよ。えいっ、てね」
右手の中指と人差し指を立て、ちょいと振ったシアは笑う。
「本当はいけないんですけど、女神様も多めに見てくださると思います」
シアは気づいているだろうか。今の表情に、エドが完全に魅せられていることを。
「――悪いな、シア」
「いえいえ。陛下には、お世話になっていますもの」
シアの笑みから、目を離すことができない。シアが自分のことなんて、意識していないと痛いほどにわかっているのに。
思えば、アンセルムと直接話をするのは、エドとしても怖かったのかもしれない。真実を知ったら、アンセルムに恨まれるような気がして。
「兄上、僕のことを怒っていますか?」
夕食ののち、ふたりで話がしたいとエドがアンセルムを連れ出したのは屋上だった。
(あの夜とは、空気が全然違うな)
思い出すのは、イドリスに呼び出されたザウドの夜。あの時は、夜風はもっと熱を持っていて、海の香りをはらんでいた。
「だから、その時はその時です。どうしてもだめなら、アンセルム様の記憶を消しちゃいますよ。えいっ、てね」
右手の中指と人差し指を立て、ちょいと振ったシアは笑う。
「本当はいけないんですけど、女神様も多めに見てくださると思います」
シアは気づいているだろうか。今の表情に、エドが完全に魅せられていることを。
「――悪いな、シア」
「いえいえ。陛下には、お世話になっていますもの」
シアの笑みから、目を離すことができない。シアが自分のことなんて、意識していないと痛いほどにわかっているのに。
思えば、アンセルムと直接話をするのは、エドとしても怖かったのかもしれない。真実を知ったら、アンセルムに恨まれるような気がして。
「兄上、僕のことを怒っていますか?」
夕食ののち、ふたりで話がしたいとエドがアンセルムを連れ出したのは屋上だった。
(あの夜とは、空気が全然違うな)
思い出すのは、イドリスに呼び出されたザウドの夜。あの時は、夜風はもっと熱を持っていて、海の香りをはらんでいた。