ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 やはり、アンセルムにはショックだっただろうか。話をやめようとしたが、それを許さなかったのはアンセルムだった。

「続けてください、兄上」

 自分は、聞かなくてはならないのだとアンセルムは口にする。その表情は決意に満ちていて、エドも一瞬アンセルムの気迫に押されるほどだった。

(……そうだな、俺が思っているよりずっと強い)

 なにを言っても負けないと、その表情が語るから。だから、エドは言葉を選びながらも続けた。
 イリア元王太后は、魔女の血を引く者であったこと。エドの父と結婚し、アンセルムを設けたこと。
 魔女達の暮らす場所を作るため、エドを殺そうとしていたことも。なにひとつ、残さずに語った。
 アンセルムの目には涙が浮かんでいたけれど、それでもやめてくれとは言わなかった。
 長い話が終わり、エドはほっと息を吐き出す。アンセルムに、ここまで話してしまったのは果たして正解だったのだろうか。
 唇を強く結び、身体の両脇に垂らした腕の先では、拳がぎゅっと握りしめられている。
パチパチと数度瞬きをし、涙を追い払ったアンセルムは、子供とは思えない鋭いまなざしでエドを貫いた。

< 229 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop