ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 シアの肩からアンセルムの肩に飛び移ったマルは、立ち上がってアンセルムに頬ずりした。ふふっとアンセルムが笑う。 

(……マルがいてくれて助かったわね)

 このところ、アンセルムは少し元気がない。
 急に大人になろうとしても、なりきれるものではない。いくぶん無理をさせているのではないかと、心配をしていたところでもあった。
 ふわふわの小動物に触れるのは、心を癒やすという意味では悪くない。マルもそれをわかっているからアンセルムの方に行ったのだろう。

「マルに手伝いを頼んじゃってごめんね」
「かまわないよ。君の手伝いができるなら、僕も嬉しいからね」

 アンセルムの肩に乗ったままのマルは、早く早くとアンセルムを急かす。
 今日は、アンセルムの離宮を一緒に片付けることになっている。
 主を失ってから、この宮には必要最低限の手入れをする人しか来なかった。家具には埃避けのカバーがかけられていて、さびれた雰囲気だ。
 廊下に置かれている飾りテーブルにも、彫刻にも、カバーがかけられている。ここは主を失ったのだと、歩いている間もつきつけてくるようだった。

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