ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 イリアが収容されているのは、その中でも特に厳重に管理された一画であった。
 三階建ての建物は、窓に格子がはめ込まれていて、部屋から出ることは許されていない。 

「……兄上、シアお姉様」

 建物の入り口まで来たところで、アンセルムは立ち止まってしまった。先に行こうとしていたエドが、どうかしたのかというように振り返る。

「怖い」

 怖い。アンセルムが、そう口にするのは初めてのことだった。
 時々シアに会いに来た時も、相談に来た時も、彼は弱いところを見せようとはしなかった。

「なにが、怖いのです?」

 わかっていても問いかける。アンセルムの口から、想いを吐き出させた方がうまくいくような気がして。
 久しぶりに顔を合わせる母。その母は罪人。
 普通に考えても、顔を合わせるのは怖いというか気まずいというか。ためらうのも当然。

「母上、僕のことを嫌いになってしまわないでしょうか」
「なぜ、嫌われると思っているのです?」
「母上は――僕に、あとを継がせたくなかったのではないかと思って」

 ここまで来て、急に不安になったらしい。
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