ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 なんて気の毒な、と目に涙を浮かべてシアの手を取り、「僕がついていますからね!」と励まされたのは、そんなに昔の話ではない。

「わ、私は特殊なケースだと思うんですよっ! だって、アンセルム様はずっと大切にされていたじゃないですか!」

 少なくとも、アンセルムに対するイリアの愛情は、一片の曇りもなくたしかなものだった。家族の愛を受けることがなかったシアが、羨ましいと思ってしまうほどに。

「そうだよ、エドだって、君を大切にしているだろう?」
「アンセルム様が、人としてやってはいけないことをしようとしたら叱られるかもしれませんが、嫌われることはないと思います」

 ポケットの中からマルが加勢してくれる。アンセルムはもじもじとした。

「それに、陛下がいらっしゃるでしょう? 陛下は、アンセルム様を大事に思っています。それに、私も」

 こんな弟がいたらいいなと思わせてくれたのはアンセルムである。
 家族という存在に夢も希望も持てなくなってしまったシアにも、アンセルムとエドを見ていたら、憧れてもいい家族もあるのだと思えるようになった。

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