ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 なにを今さらと自分でも思う。友人枠に潜り込めただけでも上等だ。
 ――それなのに。
 時々、胸をかすめて込み上げてくるなんとも表現しがたい思い。

「それと、こちら――調査報告書です」

 イドリスとシャーミルについて。彼らが王宮に入るのと同時に、すかさず調査を開始したらしい。だから、ヨアキムは頼りになる。

「幼い頃から、聖人としての仕事を果たしていたんだな」

 たしかに、幼くして聖人としての力に目覚めたと、シャーミルは言っていた。
 手渡された紙に記されていたのは、今日にいたるまでのイドリスの人生。

「イドリス・ソレール本人で間違いはありませんね。六歳の時から、聖人の祠で暮らしていたようです」

 ソレール家は、ルイダーン王国でも有数の大商会である。ガラティア王国とも、ソレール商会はかなり多額の取引を行っている。
 そんな中生まれた、一族内で一番年下の幼子が聖人となってしまった。
 幼くして魔物を生み出す瘴気と対決しなければならなくなった親戚一同の末っ子に、ソレール家の面々は非常に甘かった。それはもう甘やかしたというのが、ヨアキムの報告書には記されていた。
< 39 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop