ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 それ以外にも利用されるけれど、よほどのことがない限り、グリフォンの使用許可が出ることはない。いざという時、一頭も残っていないと困るからだ。
 今回、ひとり一頭ではなく、三頭だけだったのも、二頭は冒険者組合に残すためらしい。

「――イドリス殿とは、なにを話したんだ?」
「国に来ないか、と改めて誘われただけですよ。それは無理だって言ったんですけど」

 望まれない花嫁として、この国に来たが、今では故郷よりずっとこの国が好きだ。この地を離れるなんて、考えられない。

「でも、会えてよかったです。今までは、文通だけだったので」

 祠で暮らしていたシアのところに、一度も来られなかったのを気にしているのかもしれない。
 あの祠での生活の中、年に数度のイドリスとのやりとりは、シアの心をずいぶんと慰めてくれた。
 文面からシアが想像していたより、イドリスはかなり表情豊かだった。
 きっと、以前の人生で会っていたら、彼の明るさに救われただろう――そう思えるほどに、イドリスはくるくるとよく表情を変える。
 笑う時も、むくれる時も、怒る時も、いつだって彼は全力だ。きっと、泣く時も全力で泣くのだろう。
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