ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 今日初めて会うアンセルムはイリア元王太后の息子。彼にとって、シアは母の敵のようなものだ。
 まだ彼は幼いから、事実を知らせることはしないとエドは言っていたけれど、それはそれ、これはこれである。
 悪いことをしたのはシアではないが、どうしたって良心の呵責は覚えてしまう。マルが鼻を鳴らした。

「案外気が小さいんだね」
「そういうわけでもないんだけど」

 気が小さいというより、この国に来るまでは聖女の祠からほとんど出ることのない生活を送っていたから、複雑な人間関係に放り込まれるということはなかった。
 このままでいいのだろうかと思いつつ――落ち着かなく室内を見回した時だった。扉の開く音がして飛び上がりそうになった。
 どうしてこう落ち着きがないのだろう――貴族の娘としての教育を受け、聖女としてふるまう間もそれなりに上手にやってきたはずだったのに。

「待たせたな」
「いえ、お気になさらないでください――陛下」

 スカートを少し持ち上げ、丁寧に頭を下げる。
 入ってきたのは、エドだった。側近であり親友でもあるヨアキムを従えている。
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