GIFT
葵の「亜季ちゃんの事引きずってるみたいだから」という言葉から、葵の悲しそうな顔の理由がわかったような気がした。

今の僕は亜季ちゃんの事は引きずってなどいない。

今の僕にとって亜季ちゃんとの事は良い思い出。

僕が今1番好きなのは葵だ。

1番大切なのは葵だ。

葵がいなきゃ生きていけないかどうかはわからないけど、生きていく自信はない。

葵のいない世界を生きていく意味など、今の僕には見出せない。

だからこそ、愛する葵の中の不安要素は何があっても取り除いていかなければならない。

「1つだけ言っとくよ。僕が愛しているのは世界中でたった1人だけ。それは未来永劫変わらない。僕はその人が本当に大好きで大好きで仕方ないんだ。どんなにカッコいい言葉を並べても僕の気持ちは伝えきれないかもしれない。でも、僕はハッキリ言える。誓える。僕は葵を愛してる」

「・・・・・。もっ‥もし数年後に私が死んでしまったり、瑛太の前から突然消えてしまうとわかっていても…瑛太は私と結婚する?」

「考えたくもないけど、それでも僕は葵と結婚する」

「どうして?わかってるなら結婚しないで、他にいい人を見つけた方が絶対いいよ。その方が絶対幸せになれるから…」

「僕の幸せは葵と一緒にいる事。葵じゃなければ幸せになれない。そして葵を幸せにしてあげなければ僕の幸せは幸せとは言えない。僕と葵が幸せになって本当の幸せと言える。だから僕は葵と離れない」

「・・・・・。瑛太ってホント馬鹿だよ。そんなんじゃ、絶対幸せになれないから」

「そうだね」

「バカッ」

「バカだね」

すると葵は、目をウルウルさせながら僕を見つめていた。

僕は透かさず葵の唇にキスをした。

僕らは今、六郷堀という小さくて水のキレイな川のほとりに来ていた。

ここは僕のお気に入りの場所だった。

小さい時から釣りをしたり、散歩の際に立ち寄って休憩したり、落ち込んだりした時は必ずここに来た。

そんな場所だからこそ葵を連れて来ようと思った。

そして今この瞬間、この場所には新たな思い出が付け加えられた。

「ここは、僕の大切な場所なんだ」

「うん、そうだよね。でも、私が言う前に瑛太の大切な場所に連れて来てくれるなんて、さすが瑛太だね」

「偶然だよ」

「偶然って大切なんだよ。偶然が重なると必然になるんだから。そして、必然は運命になるんだよ」

「よくわかんないや」
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