GIFT
「行きたいの?」
「行きたいっ」
「いいけど、何もないし面白くはないと思うけど」
「そんなのどうでもいいんだって。私は瑛太が歩んで来た人生に触れたいの…」
「そうなんだ…」
「ところで、頼んでおいた物持ってきてくれた?」
「もちろん持ってきたよ」
僕は鞄の中から、それを取り出そうとした。
「瑛太、まだいいよ。小学校に着いてからで…」
「えっ…いいの?」
「うん」
そして、小学生の時に毎日使っていた川沿いの通学路を通って学校へ向かった。
歩いているだけで、あの頃の光景が目の前に浮かんできた。
「通学中は石を蹴飛ばしたり、川の中に石を投げて遊んだり、鞄持ちをしたりして本当に楽しかったなぁ」
「えぇ~いいなぁ。私は小学生の時から海外に住んでいたし、親が礼儀作法とか、しつけに厳しかったから、そういう事はさせてもらえなかったの」
葵は昔を思い出して寂しそうな顔をした。
「だったら、今やろうよ」
「えっ!?」
「葵には蹴りやすそうなこの石がいいかな。学校までなくさずに持っていけたら勝ちだからね」
「よ~し、絶対勝ってやる。せ~のっ」
すると葵の蹴った石は、みるみる右に曲がって行き、最後は川の中に落ちて行った。
「強く蹴り過ぎだよ。軽く蹴りながら、ちょっとずつ進むんだよ」
「そういう事は先に言ってよね」
「言う前に勝手に蹴ったくせに…」
「やっ‥やっぱり石投げしよぉっと」
都合が悪くなると、すぐにとぼける。
ホントにズルい。
ずる賢い。
負けず嫌い。
「はぁ~」
わざと大きく溜め息をついてみた。
ふと顔を上げて葵を見ると、石を手に持って全力でそれを僕に向かって投げよっ…
「ちょ‥ちょっと危ないじゃないかっ」
石を持った腕を僕に向かって振り下ろそうとしていたので慌てて腕を掴んで制止した。
「あらっ、ごめんなさい。瑛太がいるの気付きませんでしたわ」
そんな訳ないだろ…。
「いいから、その石をこっちに渡しなって」
「ダメ〜」
葵は何故かその石をポケットの中に押し込んでいた。
「その石どうするのさ?」
「関係ないでしょ」
どうやら、機嫌をそこねたらしい。
こういう時は、早めに手をうっておかないと後々面倒な事になる。
「葵…」
僕は周りに誰もいないのを確かめると、葵を抱きしめて後ろ髪を優しく撫でた。
こうすると大抵は機嫌が良くなり甘えてくる。
すると案の定、僕の胸元に顔をうずめて甘えてきた。
ほらね。
なかなか可愛いじゃないか。
「ちょろい女だと思わないでよね」
「ははは…」
しばらくの間、川沿いの道を寄り添いながら肩を並べて歩いた。
「瑛太っ、ちょっと止まって」
「行きたいっ」
「いいけど、何もないし面白くはないと思うけど」
「そんなのどうでもいいんだって。私は瑛太が歩んで来た人生に触れたいの…」
「そうなんだ…」
「ところで、頼んでおいた物持ってきてくれた?」
「もちろん持ってきたよ」
僕は鞄の中から、それを取り出そうとした。
「瑛太、まだいいよ。小学校に着いてからで…」
「えっ…いいの?」
「うん」
そして、小学生の時に毎日使っていた川沿いの通学路を通って学校へ向かった。
歩いているだけで、あの頃の光景が目の前に浮かんできた。
「通学中は石を蹴飛ばしたり、川の中に石を投げて遊んだり、鞄持ちをしたりして本当に楽しかったなぁ」
「えぇ~いいなぁ。私は小学生の時から海外に住んでいたし、親が礼儀作法とか、しつけに厳しかったから、そういう事はさせてもらえなかったの」
葵は昔を思い出して寂しそうな顔をした。
「だったら、今やろうよ」
「えっ!?」
「葵には蹴りやすそうなこの石がいいかな。学校までなくさずに持っていけたら勝ちだからね」
「よ~し、絶対勝ってやる。せ~のっ」
すると葵の蹴った石は、みるみる右に曲がって行き、最後は川の中に落ちて行った。
「強く蹴り過ぎだよ。軽く蹴りながら、ちょっとずつ進むんだよ」
「そういう事は先に言ってよね」
「言う前に勝手に蹴ったくせに…」
「やっ‥やっぱり石投げしよぉっと」
都合が悪くなると、すぐにとぼける。
ホントにズルい。
ずる賢い。
負けず嫌い。
「はぁ~」
わざと大きく溜め息をついてみた。
ふと顔を上げて葵を見ると、石を手に持って全力でそれを僕に向かって投げよっ…
「ちょ‥ちょっと危ないじゃないかっ」
石を持った腕を僕に向かって振り下ろそうとしていたので慌てて腕を掴んで制止した。
「あらっ、ごめんなさい。瑛太がいるの気付きませんでしたわ」
そんな訳ないだろ…。
「いいから、その石をこっちに渡しなって」
「ダメ〜」
葵は何故かその石をポケットの中に押し込んでいた。
「その石どうするのさ?」
「関係ないでしょ」
どうやら、機嫌をそこねたらしい。
こういう時は、早めに手をうっておかないと後々面倒な事になる。
「葵…」
僕は周りに誰もいないのを確かめると、葵を抱きしめて後ろ髪を優しく撫でた。
こうすると大抵は機嫌が良くなり甘えてくる。
すると案の定、僕の胸元に顔をうずめて甘えてきた。
ほらね。
なかなか可愛いじゃないか。
「ちょろい女だと思わないでよね」
「ははは…」
しばらくの間、川沿いの道を寄り添いながら肩を並べて歩いた。
「瑛太っ、ちょっと止まって」