GIFT
「あの頃、小川さんの机の下を見てれば何かあったかもしれないよね」

「何もないよ」

「そんな事ないよ。だって小川さんは瑛太の机を見てたから、瑛太の気持ちをわかってんだもん」

「・・・・・」

「惜しかったね」

「そうだね…」

「でも、2人は純粋でウブだったから、進展はなかったかも」

「確かに…。何か切なくなるよ」

「仕方ないよ。2人は小学生だったし、出逢うのが早すぎたんだよ」

「それも運命か…」

「瑛太、また私を1人にしてもらってもいいかな?」

「わかった」

「それと、卒業アルバム借りるね」

「どうぞ」

「しばらく借りててもいい?絶対返すから…」

「普段は使う事なんてないから好きにしていいよ」

卒業アルバムを葵に渡すと、僕は教室を出て校内を歩いて回った。

理科室、音楽室、家庭科室、体育館を順に見て歩いた。



プルルルルル…‥プルルルルル…‥

『もしもし…』

『瑛太、今どこ?』

『体育館の前にいるよ。直ぐに戻るからそこで待ってて』

僕は体育館から校内へ続く渡り廊下を通り、そして職員室の前を急ぎ足で歩いていた。

すると、たまたま職員室から出てきた島崎先生と鉢合わせた。

「紺野、まだいたのか?」

「スイマセン。もう帰ります」

「それは別にいいんだ。1つお前に聞きたい事があるんだ。さっきお前の彼女に言われた言葉なんだけど、どう解釈してよいものやら…」

「何て言われたんですか?」

「“娘の遥香が5、6年生でお世話になると思いますのでヨロシクお願いします”そう言って頭を下げられたんだけど…どう思う?」

娘…

遥香…

僕の子は女の子で、名前は遥香…。

そういう事なのか?

でも、葵がそう言ったのなら間違いないだろう。

「多分ですね…僕と結婚して娘が生まれたら、この学校に通う事になって島崎先生のクラスになるかもって事なんじゃないんですか…」

「多分であそこまで言い切れるものなのか?」

「スイマセン…彼女の悪い癖で、思い込むと想像で物事を話す癖があるんですよ」

「そうなのか…それなら彼女に、そんな悪い癖は早く直すように言った方がいい」

「はい…」

危なかった。

って言うか何でそんな余計な事をしてくれたんだ。

僕はブツブツと文句を言いながら、葵の待つ教室に向かった。
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