GIFT
それから、数ヵ所のパーキングエリアで休憩を挟みながら岐阜を目指したが、当初の予定通りトータルで5時間弱で到着する事が出来た。

時刻は既に24時を回っていた。

病院に着くと、入口で喜美子おばちゃんが待っていてくれた。

たぶん母さんがメールで到着時間を知らせておいたみたいだ。

「義男さん、遠い所わざわざありがとうございます」

「いいんですよ。それよりお母さんは?」

「一命はとり止めたけど、まだ意識が戻らないの…」

「姉さん…」

母さんと喜美子おばちゃんは抱き合って泣いていた。

「瑛ちゃんも、来てくれたんだ。ホント、ありがとね」

「喜美子おばちゃん、こちらは僕の彼女のさとっ…」

「佐藤葵です」

「そうかい、ホントに可愛いお嬢さんだねぇ。瑛ちゃんがこんな可愛い彼女連れて来たんじゃ、おばあちゃんに見てもらわないとね」

喜美子おばちゃんは、流れる涙を手で雑に拭っていた。

それから僕らは喜美子おばちゃんの後に続いて病室に向かった。

そして3階にある個室に案内された。

中に入ると母さんは一目散にベッドに駆け寄り、泣きながらまさおばあちゃんに話しかけていた。

そんな姿を見ていたら、まさおばあちゃんに近寄る事など出来なくなってしまった。

「瑛ちゃん達も、ばあちゃんに話しかけてあげて…」

近付こうとしない僕らに気付いた喜美子おばちゃんが気を配ってくれた。

それから僕らもベッドの枕元に立って、まさおばあちゃんに声をかけた。

「まさおばあちゃん…瑛太だよ。頑張って」

「おばあちゃん…目を覚まして」

僕と葵が交互に声をかけていると、まさおばあちゃんが一瞬反応した。

「まさおばあちゃん、頑張れっ」

「頑張ってっ」

すると、まさおばあちゃんの目が少しずつではあるが、ゆっくりと開かれていった。

奇跡だった。

「まさおばあちゃん…もう少しだよ。頑張れ」「おばあちゃん…頑張って」

すると…まさおばあちゃんは、目を開くと横にいる僕と葵を見て微かに微笑んだ。

「まさおばあちゃん…」

「おばあちゃん…」

僕らの声で異変に気付いた喜美子おばちゃんと母さんが慌ててやって来た。

「お母さん…私がわかる?」

「喜美子…ワシはまだボケちゃおらんぞ」

「よかった…妹の久子も来てるわよ」

「お母さん…久子です」

「元気じゃったか?」

「はい…」

「こんなに遠くまで来てくれて、ありがとな」

しばらくは親子水入らずでいさせてあげた。

「あの子達と話がしたいんじゃが、3人にしてくれんか?」
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