GIFT
葵は僕たちに聞こえないように、顔にタオルを押しあて泣いていた。
何時間も何時間も泣き続けていた。
ひどい時は朝まで泣いている事もあった。
僕は葵の夫として、泣いている葵の傍で一緒に泣いてあげる事も、優しい言葉をかけてあげる事も、背中をさすってあげる事も出来なかった。
只、葵が泣き止むまで待ってあげる事しか…
隣の部屋で1人涙を流す事しか…
そして、今日は10月13日…
僕と遥香の誕生日。
葵が昨晩から頑張って料理を作っていてくれたので、テーブルの上にはズラリとご馳走が並べられていた。
それに僕の事はともかく、遥香が生まれた素晴らしい日を家族3人で迎えられた事を神様に感謝しなければならないと本気で思った。
出来るなら来年も…
再来年も…
ずっとこうして誕生日を迎えたい…。
「それでは、瑛太と遥香のバースディパーティーを始めたいと思います。まず始めに、また1つ歳をとってオジさんに近付いた紺野瑛太さんに、ひと言頂きたいと思います。どうですか?」
葵は中濃ソースの容器をマイク代わりにして僕に向けて聞いてきた。
「“どうですか?”って言われても…。え~と、とにかく今年は3人でこうして一緒に誕生日を迎えられて本当に幸せです。去年は葵も遥香も病院にいたので、1人寂しく誕生日を祝いました。来年も再来年もずっ‥」
「はいっ。では次に1才の誕生日を迎えた、は~ちゃんに聞いてみたいと思いまちゅ」
「ちょ‥ちょっと、僕がまだ話してるだろ」
遥香に向けようとしたニセマイクを僕は掴んだ。
「うるさいパパでちゅねぇ。話が長くて眠くなっちゃいまちゅよね」
「バブ~バブ~キャッキャッ」
葵が再び遥香に中濃ソースの容器を向けると、小さくて可愛い手でそれを掴んでペロペロと舐め始めた。
すると美味しくなかったらしく、嫌そうな顔をしながらそれをバンバン叩きだした。
「ちょ~カワイイ。もぉ~食べたくなっちゃう」
葵はそう言い終えると遥香のホッペに何度も何度もチューをしていた。
「僕も食べたくなっちゃう」
僕は遥香にチューしている葵の頬にキスをした。
「ちょっと、どさくさに紛れて何してんの?」
「いいじゃん。何か悪い?」
「悪いよ」
「何で?」
「いなくなるから…そんな事されたら…」
「いっ‥意味がわからない事言うなって。それより続きを始めようよ」
「そうだねゴメン…」
何時間も何時間も泣き続けていた。
ひどい時は朝まで泣いている事もあった。
僕は葵の夫として、泣いている葵の傍で一緒に泣いてあげる事も、優しい言葉をかけてあげる事も、背中をさすってあげる事も出来なかった。
只、葵が泣き止むまで待ってあげる事しか…
隣の部屋で1人涙を流す事しか…
そして、今日は10月13日…
僕と遥香の誕生日。
葵が昨晩から頑張って料理を作っていてくれたので、テーブルの上にはズラリとご馳走が並べられていた。
それに僕の事はともかく、遥香が生まれた素晴らしい日を家族3人で迎えられた事を神様に感謝しなければならないと本気で思った。
出来るなら来年も…
再来年も…
ずっとこうして誕生日を迎えたい…。
「それでは、瑛太と遥香のバースディパーティーを始めたいと思います。まず始めに、また1つ歳をとってオジさんに近付いた紺野瑛太さんに、ひと言頂きたいと思います。どうですか?」
葵は中濃ソースの容器をマイク代わりにして僕に向けて聞いてきた。
「“どうですか?”って言われても…。え~と、とにかく今年は3人でこうして一緒に誕生日を迎えられて本当に幸せです。去年は葵も遥香も病院にいたので、1人寂しく誕生日を祝いました。来年も再来年もずっ‥」
「はいっ。では次に1才の誕生日を迎えた、は~ちゃんに聞いてみたいと思いまちゅ」
「ちょ‥ちょっと、僕がまだ話してるだろ」
遥香に向けようとしたニセマイクを僕は掴んだ。
「うるさいパパでちゅねぇ。話が長くて眠くなっちゃいまちゅよね」
「バブ~バブ~キャッキャッ」
葵が再び遥香に中濃ソースの容器を向けると、小さくて可愛い手でそれを掴んでペロペロと舐め始めた。
すると美味しくなかったらしく、嫌そうな顔をしながらそれをバンバン叩きだした。
「ちょ~カワイイ。もぉ~食べたくなっちゃう」
葵はそう言い終えると遥香のホッペに何度も何度もチューをしていた。
「僕も食べたくなっちゃう」
僕は遥香にチューしている葵の頬にキスをした。
「ちょっと、どさくさに紛れて何してんの?」
「いいじゃん。何か悪い?」
「悪いよ」
「何で?」
「いなくなるから…そんな事されたら…」
「いっ‥意味がわからない事言うなって。それより続きを始めようよ」
「そうだねゴメン…」