GIFT
すると葵は、ケーキにローソクを突き刺して火をつけ始めた。

「瑛太、ゴメンね。ローソクを歳の数だけ用意できなくて」

「別にいいよ。今日は遥香が主役なんだから1本あれば十分だよ」

「うん…」

僕は、しょんぼりしている葵の頭に手をのせ撫でてあげた。

「それじゃあ、電気消すからね」

葵はリモコンで電気を消した。

「ハッピーバースデー瑛太、ハッピーバースデー遥香、ハッピバッ…ス…デー…」

葵は突然歌うのを止めて泣き始めた。

「ハッピーバースデーディア遥香~ハッピーバースデートゥーユー」

続きは僕が歌った。

「ごっ‥ごめんね瑛太…」

「いいって」

葵はタオルで涙を拭くと、涙を必死でこらえながら無理して微笑んで見せた。

「は~ちゃん、フゥーてしてごらん。フゥーって」

葵は遥香に息を吹く真似をして見せた。

「無理でしょ。わかる訳ないよ」

「そんな事ないよ。は~ちゃんはママの言う事なら何だってわかるんだから。は~ちゃん、フゥーて」

「フゥ~」

すると遥香は葵を真似て息を吹いた。

当たり前だが火が消える訳などなかっ…

パンッ!?

小さな破裂音とともにローソクが粉々に飛び散った。

「は~ちゃん、すご~い」

「・・・・・」

何だ今の…

遥香がやったのか…

「葵…今のって?」

「は~ちゃんだよ。今“フゥー”ってやったでしょ?」

「やってたけど…」

「は~ちゃんが消したんだよ」

「消したっていうか…もういいよ…」

葵が全てを語らなくても何が言いたいのかはわかった。

と言うよりも、葵はわざと遥香の能力を僕に見せていた。

後で僕が知っても驚かないように…。

そんな事をしなくても遥香の能力には薄々気付いてはいた。

いやっ…生まれる前から考えていた事だった。

能力者である葵の子として生まれてくるなら、その子もまた能力者に違いないと…。

別に能力者だろうが、そうじゃなかろうが、どうでもよかった。

只、能力者として生まれて来た事で、葵のように過酷な使命を帯びて生きなければならない人生は、送らないで欲しいと親として思った。

それに能力者の力を悪用しようとする人間に狙われないかも心配だった。

「は~ちゃんには、しっかりした先生が、全力で守ってくれるし、正しい道に導いてくれるから大丈夫だよ」

「えっ…」

「安心したでしょ?」

「した…かな…」

先生か…
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