GIFT
「わっ‥私は…瑛太の未来より遥香を選んでしまったの。瑛太を犠牲にしてでも遥香を守ろうとした。私、最低だよね…」

「同じだよ」

「えっ…」

「葵と同じ立場なら、僕も同じ選択をした。葵を犠牲にしてでも遥香を守ろうとした。きっと葵が僕と同じ答えを出すと確信しているから、迷わずその選択をする事が出来ると思うんだ。葵も僕が同じ答えを出すと確信しているからこそ、その道を進んだ筈だよね」

「ごめんなさい…」

「謝らなきゃいけないのは僕の方だよ。どんなに葵が悩み苦しみ、涙を流していても、僕は何もしてあげられなかった」

「違う…瑛太は全てをわかったうえで敢えて何もしなかった。でもそれは瑛太なりの優しさ、愛情…。だって瑛太は、どんな時でも傍にいてくれた。私がする事を、ただ黙って見守ってくれた。それに私が1人で泣いていると、私の為に隠れて涙を流してくれた」

「どうしてそれを?」

「瑛太の私を想う気持ちが、今私に全てを教えてくれた。でも、どうしてだろう?さっきまでは瑛太の気持ちが全く伝わってこなかったのに、今は次から次へと溢れ出ては私に教えてくれる」

「それは僕の想いを葵に気付かせないように、ずっと演じてきたからね」

「何でそんな事?」

「葵が心変わりしないように…迷い悩み苦しまないように…」

「瑛太…ありがとう。こんなに愛してもらえて、私は幸せだった。一生分の愛をありがとう。もう…悔いはないよ」

「こんな時まで意地はらなくていいから…」

「ほらっ…瑛太、私を見て。私泣いてないでしょう。やるべき事は全てやって来たから全然悲しくないんだよ」

「僕は…葵の為にしてあげたい事は山のようにあったのに全然出来なかった。悔しいよ…」

僕は、この場所に向かっている時から…‥

ここに着いてからも、ずっと涙が止まらないでいた。

「瑛太…泣かないで」

「まだまだ僕らは、やらなきゃいけない事があるじゃないか。結局釣りだって教えてあげられなかった。結婚式もしてないし新婚旅行だって行ってない。その他にも何年も何十年先までも予定がイッパイ詰まってるんだよ。だから何処にも行かせない…」

「ありがとう…。でも釣りの事は…気にしないで。私だって瑛太としたい事はイッパイあるけど、私にはもう無理だから…。私と一緒に過ごせなかった時間は遥香たちの為に使ってあげて」
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