GIFT
そんな僕に遠藤さんは「私が遥ちゃんを見ながら家事をするからテレビでも見てゆっくりしていて」といつも言ってきた。

でも僕に出来る事はしたかったし、あまり遠藤さんに無理をさせて倒れられたら困るので、そこは譲らなかった。

そして、遠藤さんがひと通りの家事を終えると僕は遥香を風呂に入れる。

その後、風呂から出た遥香を受け取った遠藤さんは、遥香を洋服に着替えさせるとベビーベッドに連れて行って寝かしつける。

それから、入浴を終えた遠藤さんとリビングでテレビを見ながらお酒を少しばかり飲んで23時くらいには布団に入る。

これが僕らの日常であり、これがこの先何年も続く事となる。





葵がいなくなって3年…‥

遥香が生まれて4年が経ち、遥香は幼稚園に通う事となった。

「パパ~、みさきちゃん、はやくしてよ」

4月8日…幼稚園の入園式。

遥香は、この日を数ヶ月も前から楽しみにしていた。

最初は嫌がっていた幼稚園だったのに、数ヶ月前を境に急に一変した…。



数ヶ月前…

仕事から帰ると、遥香が落ち着かない様子で、家の中を行ったり来たりしていた。

「遥香…どうした?」

「きょうね…は~ちゃん、プレジェントがもらえりゅの」

プレゼント???

僕は遠藤さんと顔を見合わせた。

僕も遠藤さんもそんな物用意していなかった。

どうやら遥香は未来を見たようだ。

そう…遥香も葵と同様に能力者だった。

遥香が能力に目覚めたのは、僕らが知る限り3才の始め頃だった。

もしかしたら、もっと前からなのかもしれないが、それはわからない。

「くりゅよ…」

遥香が、そう言った直後…‥



キィ―――――ン……



キィ―――――ン……



ものすごい耳鳴りと、絞めつけられるような頭痛に襲われた。

痛みに耐えながら片目を開けると、遠藤さんは頭を抱えながらしゃがみこんでいた。

でも、遥香は違っていた。

遥香は痛みに襲われている様子はなく、平然とした顔をしていた。

更に目を見開いて辺りを見回すと、リビングにいる僕らの目の前にはプレゼント用の大きなピンク色の袋が置かれていた。

そして、いつの間にか耳鳴りと頭を締めつけるような痛みは消え去っていた。

再び遥香に目を向けると袋のリボンを外して、中の物をテーブルの上に取り出し始めていた。

すると、テーブルの上には幼稚園の制服が一式、バッグと運動着と靴がズラリと並べられた。

送り主は何処にも書かれていないが直ぐにわかった。



プルルルル…プルルルル…‥
< 144 / 194 >

この作品をシェア

pagetop