GIFT
「はい。学校では絶対に使うなって言って聞かせてましたし、僕が能力をよく思ってないのを知ってるので…」

「もしかしたら遥香ちゃんは、能力を使う事はいけない事だと思っているんじゃないかしら?」

「だと思います」

「どうして?遥香ちゃんの能力は素晴らしいものよ」

「他の人に知られたら化け物扱いされますよ。それに世間に知られて噂が広まっていけば、面白半分で近づいて来る人間だっていれば、それを金儲けの道具にしようとする人間だっているじゃないですか」

「それは能力自体の問題じゃないわ。能力を認めようとしない人間と、それを悪用しようとする人間の問題よ。遥香ちゃんの能力は時と場所を見極めて使えば、これ以上最高のものはないわ。でもその為には、遥香ちゃんに能力の使い方を指導する人間が必要ね」

何故遥香が先生に能力の事を話したのかがわかったような気がする。

「もしかして先生が?」

「残念だけど違うわよ。でも、遥香ちゃんの傍には、そういう人が既にいるみたいよ」

「先生は、その人の事知ってるんですか?」

「紺野くん…遥香ちゃんとしっかり向き合って、自分の目で見てあげなさい」

先生は質問には答えなかったが、僕の手を握りしめ真剣な眼差しでそう言った。

「はい…わかりました」

「パパ~電話だよ」

するとタイミングよく遥香と美咲さんが教室に戻って来た。

「もしかして、葵?」

「そうだよ」

「先生すいません…」

「いいわよ。ゆっくり話をしてきなさい。今日は、遥香ちゃんで最後だから大丈夫よ」

「すいません…」

それから僕は先生に一礼をして廊下に出た。

「葵…」

「瑛太…」

スマホの画面に映っている葵は、背景から察す中学校にいるようだ。

2人で来たあの時に間違いない。

「葵、今僕は中学校に来ている」

「遥香の三者面談でしょ。知ってるよ」

「葵も今、僕と一緒に中学校に来ているんでしょ?」

「そうだよ…」

「もしかして今、怒ってるところ?」

「遥香と話をするまではね…」

確かあの時、葵は先生の態度に腹を立てて1人で校内を歩いていた。

でも、戻って来た葵は何故か怒りは収まり、晴々とした顔をしていた。

「遥香と何を話したの?」

「うん…遥香に叱られちゃった。片岡先生の事を悪く言ったら…」

「僕が言った通りの先生だったでしょ?」

「遥香も瑛太と同じ事を言ってた」
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