GIFT
「そうでしょ?先生は優しくて、生徒思いで、教育熱心で、かわいくて、本当に素晴らしい先生なんだよ」

「そうみたいね…」

「でも…葵が感じたように、ああいう感じだから誤解される事も多かったし、本当の先生を知らない女子生徒からは結構嫌われていたんだ」

「反省してます」

しばらく話をしてから電話を切ると、教室で待つ先生の元に急いで向かった。

「すいません。面談中なのにお待たせしちゃって」

「いいのよ、気にしないで。それで本題にはいるけど、遥香ちゃんの第一志望はっ‥」

「W高校ですよね」

「知ってたんだ…意外ね」

「遥香から直接聞いた訳じゃありません。以前、葵に理由も聞かされず連れて行かれた事があったんで…」

「なら話は早いわね。遥香ちゃんなら、県下で1番レベルの高いW高校でも、もう少し頑張れば合格も夢じゃないわ」

「葵もきっとそれを望んでいると思います」

先生の言う通り遥香はW高校に合格するだろう。

それは葵が見た未来の映像に、W高校の制服を着た遥香の姿が移っていたから間違いない。

それに遥香自身も、もしかしたら自分の未来の姿を見ているのかもしれない。



それから1年後…

葵が見た未来通りに遥香はW高校の受験に見事合格し、4月から晴れてW高校の生徒になった。

また遥香が中学を卒業するのに合わせて、僕たち家族3人は葵と美咲さんが以前住んでいたマンションに引っ越しをした。

それは僕と美咲さんで話し合って決めた事なのだが、今まで住んでいたアパートでは家族3人では狭く、また年頃の娘の遥香が、1人部屋がないのは可哀想だという美咲さんの意見があったからだ。

それにマンションからなら、高校まで自転車で30分もかからないで行けるし、バスを使えばより時間を短縮する事が出来る。

そして高校生になった遥香は、中学時代と同様に、よく勉強し学年でもトップ5に入るような優等生になった。

部活には入らなかったが、小学生から習っているピアノを今でもずっと続けていた。

小学、中学共にピアノコンクールで幾度にも渡って受賞するくらいの腕前だった。

だから、アパートにはトロフィーと賞状が部屋のあちこちに飾られていた。

遥香は美咲さんには話していたようだが、プロのピアニストを目指しているらしい。

これも引っ越しの理由の1つだった。
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