GIFT
「亜季ちゃんなんでしょう?」

「どうして、そう思うんですか?」

「僕たちが知ってる能力者なんて限られているし、亜季ちゃんなら今までに起きた事全てに説明がつくんだ」

「例えばどんな事ですか?」

「葵が小学生の時、能力の使い過ぎが原因で意識が戻らず病院に入院していた事があったけど、その時に葵を救った黒いコートの人物は亜季ちゃんだったんじゃないの?」

「そうです…」

「って事は、茉奈ちゃんを助けた黒いコートの人物も亜季ちゃんて事?」

「はい…」

「それじゃあ…葵のすぐ傍でずっと助けていたのも?」

「亜季お姉ちゃんです。葵お姉ちゃんを陰でサポートしていてのも、変えてはいけない未来を修正修復していたのも全て亜季お姉ちゃんでした」

「やっぱりそうだったのか…。ちなみに亜季ちゃんの能力って一体何なの?」

「亜季お姉ちゃんは、私と同じでいくつかの能力を兼ね備えていました」

「もしかして、亜季ちゃんも茉奈ちゃんと同様に特殊能力者って事?」

「そうです。しかも能力は私や葵お姉ちゃんの物より格段に上回っています」

亜季ちゃんが能力者だというのはわかっていたけど、まさか葵を上回る能力者だったとは驚きだった。

あの頃、亜季ちゃんは自分の事を全く話してくれなかった。

何でも言って欲しかったけど、いつも1人で何かを抱え込み、何かを隠していた。

何も語らないまま僕の前からいなくなった。

そして、僕と葵が結婚してから亜季ちゃんと会ったのは今日まで数回しかなかった。

1度目は遥香が産まれた数日後。

2度目、3度目は遥香の小学校、中学校の入学式の時だった。

その時は、僕も亜季ちゃんも何だかとても気まずくて、目を合わす事も2人きりで話をする事も殆んどなかった。

何だか避けられているような気もした。

あんな別れ方をしたのだから仕方のない事だった。

葵と亜季ちゃんは僕が高校2年の時、S校に転校生としてやって来た。

そして僕は未来の世界で結婚する事になっている葵ではなく、亜季ちゃんを好きになり、亜季ちゃんも僕に恋をした。

それなのに亜季ちゃんは、僕と葵の未来、遥香の存在を守る為に、僕との距離を縮める事も離れる事も出来ずにいた…。

ただ均衡を保つ事しか出来ないでいた。

そんな中、亜季ちゃんは僕らを守る為に外国へ旅立つ決意をした。

亜季ちゃんの出発が3日後と本人から聞かされた雨の降る夜、亜季ちゃんは葵に成りすまして僕に会いに来た。

その時は全く気付かなかった。

気付いてやれなかった。

亜季ちゃんは僕に【ホテルに連れて行って下さい。そして私を抱いて下さい】と泣きながらそう言った。

そしてその夜、僕は葵に成りすました亜季ちゃんを抱いた。

翌日、亜季ちゃんは予定よりも2日も早く外国へ旅立ってしまった。

何も言わずに…‥

その時…僕と亜季ちゃんの恋は終わった。
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