GIFT
駅までの道中、葵さんは今まで未来が見えた事によって起こった出来事について詳しく話してくれた。

「まだまだ話せば山のように沢山あります。今話したのは私が経験した出来事の氷山の一角にすぎません」

「・・・・・」

言葉にならなかった。

僕が想像していた以上に、何十倍、何百倍も凄まじい人生を送ってきていた。

それに葵さんの未来を見る能力は、数日、数週間、数ヵ月先どころではなく、数年先、数十年先まで見えているようだ。

また葵さんは未来を見る時、映像が頭の中に送られて来ると言っていた。

どのような映像なのか聞いてみると、それは静止画を断片的にコマ送りしたかのように見えたり、テレビや映画のように動画が流れるように見えたりするらしい。

それらの事を聞いて正直、僕は怖じ気づいてしまった。

そんな僕の表情を葵さんは見逃さなかった。

「何もしてくれなくてもいいんです。ただ、傍にいてくれさえすれば…」

「すいません。葵さんの話を聞いて、少しビビってしまいました」

「私の事、怖いですか?」

「怖い?怖い訳ないじゃないですか」

「いいですよ、無理しなくても…。小学生の時から、仲の良かった友達も私の能力に気付くと気味悪がって近付かなくなりました。ヒドイ時はクラスメイト全員に無視された事もありました。私だって自分の事を普通じゃないって思ってます。他の人からしたら私は化け物と一緒ですよ」

「いい加減にして下さい!葵さんは化け物なんかじゃない。普通のどこにでもいる女子高生です。未来を見る能力は個性です。葵さんにしかない素晴らしい個性です」

「個性ですか…そんな風に優しい言葉をかけられたら、普通の女の子だったら恋に落ちてしまいますよ」

「・・・・・」

「うっ‥嘘ですよ。そんなに困った顔しないで下さい」

「別に困ってなんかいません…」

亜季ちゃんと同じ顔をした葵さん…‥

知れば知るほど妙に惹かれる…‥

性格がこんなにも違う2人なのに…‥

どちらも好きになってしまいそうだった。

でも…今、僕の心の中では亜季ちゃんの存在が大きく膨れ上がっていた。

引き返す事の出来ないくらい大きくなっている。

たとえ葵さんが僕を好きになり、僕が葵さんに惹かれたとしても、どうする事も出来ない…。

「ちょ‥ちょっと紺野さん…本気にしないで下さい。私にだって好きな男性のダイプだってあるし、もしかしたら好きな人だって既にいるかもしれないじゃないですか…」

「いるんですか?」
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