GIFT
しばらくすると遠藤さんの後ろをパジャマ姿の葵さんがついて来た。

いつもとは違う姿に少しばかり釘付けになってしまった。

「紺野さん…」

僕の前に現れた葵さんは、かなり具合が悪いようで、血の気のない青白い顔をしていた。

「葵さん、無理して出て来なくて良かったのに…」

「大丈夫です。もう、そろそろだと思ってましたから…」

「そっ‥そうなんだ?」

葵さんには、僕がここに来るのはわかってたようだ。

「葵ちゃん…」

「うん、大丈夫だよ」

亜季ちゃんと葵さんの2人は見つめ合い、それ以上何も言わなかった。

それだけで、十分わかり合っているような感じだった。

それよりも、僕は2人がこうして一緒にいる所を見るのは初めてだった。

ビックリするくらいソックリだった。

双子なんだから当たり前なんだけど。

「瑛太さん、先生から預かってきた物…」

「あっ‥そうだった」

僕が鞄の中から預かり物を取り出そうとしていると、葵さんが前屈みの姿勢で鞄を覗き込んできた。

何となく顔を上げると、僕の目に飛び込んできたのは、葵さんのパジャマの胸元から見える胸の谷間だった。

制服を着ている時は気付かなかったけど、結構胸が大きかった。

それに下着をつけていないようで、もう少しで全部見えそうだった。

「エッチ…」

少し離れた場所から亜季ちゃんの声が聞こえた。

「えっ!?」

亜季ちゃんを見ると、僕を横目で睨み頬を膨らませていた。

葵さんを見ると、目が合って微笑まれた。

何事もなかったかのように、宿題のプリントと連絡ノートを鞄の中から取り出し、葵さんに渡そうとした。

しかし僕は再び胸元に目が行ってしまい、葵さんが受け取る前に床に落としてしまった。

慌てて拾おうとすると、葵さんの方が一瞬早くそれを手に取った。

そして僕は、そんな葵さんの手を一点歩遅れて掴んだ。

その瞬間だった。

ドンッ!?

頭を金槌で叩かれたような衝撃と、頭のてっぺんから足のつま先まで体全体を電気が走った。

そして、僕の視覚には現実とは思えない、断片的で音のない世界の映像が流れていた。

それは目で見ているのか、それとも脳が見ているのかハッキリとはわからないけど、ただ1つだけ言えるのは、この映像は葵さんが見ている未来の世界である事は間違いなかった。

それに、その映像は余りにも衝撃的で悲惨な物だった。
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