GIFT
「1つ聞いてもいいかな?」

「葵ちゃんの能力の事ですか?」

「まっ‥まぁ、そんなところかな。亜季ちゃんはどう思ってるの?」

「子供の時から見てきたから何とも思いませんけど、葵ちゃんの見ている未来は、ほぼ100%当たります。でも、葵ちゃんは悪い未来を変えようと頑張っているんです。実際に変えられた未来もありました」

希望に満ち溢れた明るい話とは裏腹に、亜季ちゃんの表情は曇っていた。

「それなら僕が見た未来も…」

「葵ちゃんに触れた時に未来の映像を見ちゃったんですね?」

「そうみたいなんだ。同じクラスの仲村が…」

それ以上は僕の口からは言えなかった。

「交通事故にあって…亡くなってしまう」

「どうしてそれを?」

「葵ちゃんは、数日前から見えていたようです。具合が悪くなったのも、ちょうどその頃だと思います」

葵さんが学校を休んだ理由って…‥

「仲村さんの未来を見てしまったからです。ショックもありますし、能力を使うと体力を相当消耗するみたいなんです。ひどい時は1週間くらい寝込む事だってあるんですよ」

「そうなんだ…。僕が家に行ったから、葵さん無理して出て来てくれたんだ…」

「瑛太さんのせいではありませんよ。きっと葵ちゃんは、瑛太さんに会いたかったんですよ…」

「・・・・・」

「ごめんなさい、余計な事を…」

「べっ‥別にいいよ。それともう1つ質問なんだけど、あきっ‥」

「私は、違います」

「そっ‥そうなの?」

まだ何も言ってないのに…。

「それに、例え私は能力者だったとしても何もしないと思います」

意外な発言だった。

何故なら僕の知ってる亜季ちゃんは、困っている人やお年寄りや体の不自由な人がいれば、放っておけずに助けに行くような優しい女性だったからだ。

「どうして?」

「人間に特殊な能力なんて必要ないんです。そんなものなくたって人助けは出来るし、悪い未来だって…きっと変えられます。こんなにツラい思いもせずに済んだんだから…」

亜季ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

それに、今のは明らかに能力を持ってるかのような言い方だった。

「ちっ‥違います。もし私が能力者だとしたらって事です」
< 30 / 194 >

この作品をシェア

pagetop