GIFT
「やっぱり…。これでわかりましたよね?私に触れるのは危険なんです。特にさっきみたいに、いくつもの未来を同時に見ている時は絶対に駄目です」

「そうみたいですね…わかります。それより少し風通しの良い所に行きませんか?」

「はい。あっ‥あの…」

「どうかしましたか?」

「少しフラフラするんです。私の事、支えてもらってもいいですか?」

普段、感情をあまり表情に出す方ではない葵さんだけど、この時は真っ白な頬がピンク色に染まっていくのがわかった。

「はい、僕の腕に摑まって下さい。でも触れても大丈夫ですか?」

「今は何の未来も見えていないので大丈夫です」

そして、葵さんは僕の腕に掴まり屋上までの階段を一緒に上がった。

「いつもあんな風に未来の映像が見えてしまってるんですか?」

「いつもあんな感じですよ。もっとすごい時もあります」

葵さんは無表情で淡々と話していた。

「どうしてそんなに平然としてられるんですか?僕だったら耐えられなくて頭がおかしくなってしまいます」

「全然平気じゃないし、耐えられているとも思ってません。さっきだって気持ち悪くなって吐いてたじゃないですか…」

「そうですけど…。ずっとこんな風に生きてきたんですか?」

失礼な言い方だとわかっていたけど、つい出てしまった。

「物心がついた時からでした。小さい時は、今のように鮮明な映像は見れなかったけど、毎日のように未来を見ていました。だから、怖くて泣いたり気持ち悪くなって吐いたりしてました。あまり今と変わりませんけどね」

葵さんはフェンスを掴むと、目を細めて遠くを眺めていた。

「ツラくて怖くて、こんな能力を持って生まれてきてしまった自分を恨みました。何度も死のうと思いました。でも…死ねませんでした」

「・・・・・」

返す言葉が見つからなかった。

でも、ようやく葵さんの独特の雰囲気というか、どこか影を背負って生きてるように見えた理由がわかった。

「そんな顔で見ないで下さい。能力以外では普通の女子高生なんですよ」

葵さんは、何も答えられない僕に笑顔を見せてくれた。

「ゴメンね。本当は僕が葵さんを励ますような言葉をかけなきゃいけないのに…」

「いいですよ。それより未来の事で何か聞きたいんじゃないんですか?」

葵さんも亜季ちゃんと同じで勘が良いようだ。

「助けたい人がいるんだ」

「仲村さんですね?」

「そうなんだ。仲村を助けたいんだ…」
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