GIFT
「何黙ってるんだよ。返事しろよっ」

「・・・・・」

「何とか言ってくれよっ」

「・・・・・」

「仲村ぁぁぁぁっ………」

僕は力いっぱい仲村を抱きしめた。

仲村が、どこへも行ってしまわないように…

強く抱きしめた。

キィ――――――――ン

何だ?

空気が変わった。

このもの凄い威圧感…

何が起きてる?

次第に僕の体は力が抜け始め、体が言う事を利かなくなっていった。

そして抱きしめていた仲村が手から解けると、僕はそのまま後ろに倒れていった。

ガンッ!?

後頭部を強打したようだ。

不思議と痛みは感じられなかった。

でも、意識が遠のいていくのはわかった。

僕も死ぬのか…

それでもいい…

仲村1人じゃかわいそうだからな…

「仲村…」

僕は夜空に向かって手を伸ばした。

「どこにも…行く…な…‥」

今までみたいに僕の近くにいてくれ…。



「パパ…」

誰かに体を揺すぶられた。

目を開けていられないほど重いまぶたを必死で開くと、僕の目の前には葵さん?がいた。

目が霞み視界が悪くハッキリ誰とはわからなかった。

「パパ…しっかりしてっ。パパっ」  

何故、葵さんは僕を「パパ」と呼ぶのだろう?

もう目を開ける事も、体を動かす事も出来なかった。

少しずつ葵さんの声が遠くなっていった。

もう…なに…も…きこえ…な…い…‥



目を開けると、病院?のベッドに寝かされていた。

隣のベッドから人の声が聞こえてきた。

カーテンがかかっているので、顔は見えないが、どんな人物かは直ぐにわかった。

それにしても、どうして僕はここで寝ているのだろう?

覚えているのは、学校から1人で帰ろうとすると、千葉が僕の家まで一緒に帰ると言って、後ろをついて来ていた事…

そして家に帰った後、慌てて家を飛び出すと、何かをする為に駅へ向かっていた事…

そこからの記憶が全くない…

「瑛太さん…」

カーテンを開けて、中に入って来たのは亜季ちゃんだった。

「亜季ちゃん…僕はどっ‥」

「家を出てからの記憶がないんですね? ここは隣町にある大学病院です。瑛太さんは駅に向かう途中で交通事故にあって、救急車で運ばれたんですよ」

「亜季ちゃんと会う約束でもしてたっけ?」

「私じゃありません…」

「じゃあ、誰と?」
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