GIFT
「仲村さんです…」

「仲村?」

誰だ仲村って?

「・・・・・」

「ちょ‥ちょっと待って…。今、思い出すから…‥う~ん、ダメだ。全然思い出せない…」

そもそも“なかむら”という生徒が男子なのか女子なのかすらもわからなかった。

「女子ですよ…それにクラスは瑛太さんと同じ3組です」

「そっ‥そうなんだ…全然覚えてないんどけど…」

「頭を強く打ったせいかもしれません…」

「頭を?でも、僕は何しに仲村さんに会いに駅に行ったんだろう?」

「そっ‥それは…」

亜季ちゃんの慌てようからして、何かを知ってるに違いなかった。

「何か知ってるなら教えて」

「知りません…」

亜季ちゃんは目を背け、それ以上話そうとはしなかった。

「お~い、カーテン開けてくれ」

隣のカーテンの向こうから声が聞こえてきた。

「いいですか?」

亜季ちゃんが聞いてきたので、僕は嫌そうな顔をして頷いた。

そして、カーテンが開けられた。

「よっ、瑛太。やっと目が覚めたか。お前、3日も眠り続けてたんだぞ。俺は心配で全然眠れなかったんだぜ」

やっぱりコイツだったか…。

コイツのやかましい声で目が覚めたんだった。

でも、いつもと様子が違っていた。

どこか元気がないというか、無理して明るく振舞っているような感じがした。

それは、亜季ちゃんにしても同じだった。

「千葉くん、さっきまで寝てたじゃない。それに、1日中寝てばっかりいるから看護婦さんが“よく寝る子ねぇ”って呆れてたわよ」

「言うなって。恥ずかしいじゃねえか」

千葉は頭を掻きむしりながら言っていた。

それにしても、何で千葉は病院の寝巻きを着てベッドの上にいるんだ?

「千葉、お前ってホントにバカだよな…」

ただ言いたくなったので言ってみた。

「やめろよ、照れるじゃねえか」

「褒めてねえし」

「亜季ちゃん…」

こういう時、亜季ちゃんはノリが良いから必ずツッコんでくれる。

でも真顔で淡々とした調子で言うもんだから、ちょっと怖い…。

「あざ~す」

コイツには何を言っても効き目はないらしい。

「あのさ、僕が寝てる間に仲村さんはお見舞いに来なかった?」

「・・・・・」
「・・・・・」

僕の言葉で、この場の空気が一瞬にして凍りついた。
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