GIFT

「亜季ちゃん…ありがとう。でも、千葉はわざと、ああして僕を責めているんだ。僕が後で１人で苦しまないように…なぁ、千葉っ」

「俺が、そんな気の利いた事すると思うか？」

「どうだろうな？けど…感謝してるよ」

「うるせえよっ…バカがっ」

千葉は照れ臭そうに、鼻の頭を掻いていた。

それからしばらくの間、病室の中はしんみりした空気になり、誰も喋らなくなった。

「それにしても、千葉…お前何で入院してるんだ？」

沈黙に耐えられなくなった僕が初めに口火を切った。

「犬に噛まれたんだ。野良犬３匹にだぞ。おかしくねぇ？」

「お前ならありえるよ」

「でもさ…変なんだよ。あの日、佐藤葵に瑛太の傍にいれば犬に噛まれずに済むって言われたんだ。だから嫌々だけど一緒に帰ったんだ。はぁ…」

千葉は嫌そうな顔をして溜め息をついた。

「そうなのか？」

「それから瑛太の後をついて行ってたはずなんだけど、途中から記憶がないんだ」

「お前の事だから、ボーッとしながら歩いてたんだろ」

「クソがっ…そんな事だったら、わざわざ話す必要ないだろがっ」

コイツ…いちいち腹が立つ。

ぶん殴ってやろうか。

「瑛太さん、落ち着いて…駄目ですよ」

亜季ちゃんが優しくなだめてくれたので、自分を取り戻す事が出来た。

「話の続きだけどよ、次に目を開けたら何処にいたと思う？」

「どこって…家だろ？｣

「妹はどう思う？」

千葉は僕を無視して亜季ちゃんに話をふっていた。

「わかりました。答えます。千葉くんは目が覚めると、家の近くの公園で、ブランコに腰かけてた。辺りを見渡すと既に３匹の犬に取り囲まれていて、逃げようにも逃げ場がなかった。そして最終的に、その犬たちに襲われて１０箇所以上噛まれてしまった。でも、不思議な事に噛まれてから数分しか時間が経っていないのに救急車がやって来た。誰も呼んでいないのに…。そんなところですかね」

「何でわかった？」

千葉は悔しそうに頭を掻きむしりながらそう言った。

「勘ですよ。私、こういうの当てるの得意なんですよ」

亜季ちゃんは、両頬に手をあて恥ずかしそうに微笑んでいた。