GIFT
友の想い
翌々日…

学校に行き教室に入ると、クラスの連中から話しかけられた。

みんなが“大丈夫?”とか“おかえり”などと色々声をかけてくれるので、僕らしくもない笑顔で応えたが、本当はそんな気分ではなかった。

そして、自分の席に着こうと歩いていると、僕の席の右斜め前の席に、花の入った花瓶が置かれているのが目に入ってきた。

葵さんと目が合うと微笑まれた。

「葵さん…あの席って、もしかして仲村さんの?」

「そうです…」

葵さんは、それ以上は何も語らなかった。

何気なく廊下側の席に目を向けると、僕を睨んでいる女子2人がいた。

かなり長い間睨まれていた。

あの2人に何かした覚えは全くない。

あるとするなら…

「三村さんと桜井さんは仲村さんの親友だったから…」

そんな状況を見かねた葵さんが、隣からこっそり教えてくれた。

「仲村さんの…」

僕を助けて仲村さんは死んだ。

きっと僕を助けなければ死なずにすんだ。

僕を助けなければ、今も学校に来て友達と仲良く話しをしていたはずだ。

楽しい事も幸せな事も、これからイッパイイッパイ経験しただろう。

将来なりたい夢もやりたい事も沢山あっただろう。

そんな希望に満ち溢れた未来を僕は奪ってしまったんだ。

そう思うと罪の意識に苛まれて、いてもたってもいられなくなった。

僕は席に座る事なく、荷物を持ったまま廊下に出ようと歩き出した。

すると、朝のホームルームにやって来た松下に鉢合わせてしまった。

「紺野、どこ行くんだ?」

「ちょっと気分が悪くて…」

「なら保健室に行ってろ。お前に話す事がある。それと渡したい物も…」

「わかりました…」

渡したい物?

一体何だろう?

それから僕は保健室に行き、水谷先生に事情を説明してベッドで休ませてもらった。

10分くらいベットで横になっていると、水谷先生と話している松下の声が聞こえてきた。

「紺野…入るけどいいか?」

「はい…」

僕はベッドから起き上がって返事をした。

すると松下は、カーテンを開けて中に入ってくるなり微笑んでいた。

でも、いつもの松下ではなかった。

目は赤く、腫れぼったかった。

「紺野、お前…仲村の事を覚えてないのか?」

「すっ‥すいません。全く思い出せないんです」

「そっか…でも、お前には仲村の事を少しでも忘れずに覚えていて欲しい」

「知りたいです。仲村さんの事…」

「だったら、少しだけ仲村について話してやる」

「はい」

「仲村はお前と同様、1年、2年と私が受け持つクラスの生徒だった。それにバレーボール部に所属していた」

「バレー部って…確か先生が…」

「あぁ…私が顧問をしている。だから他の生徒より頑張ってる姿も、苦しんでる姿も笑った顔、泣いてる顔、怒った顔も見てきた。仲村は…」

突然話すのを止めてしまった松下の顔を見上げた。
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