GIFT
でも、日記を読んでいて感じた事があった。
この胸の奥底から込み上げてくる悲しみと切なさ、怒り、そして友達とは違う特別な感情…。
仲村さんの記憶を失う前の僕が、本当に自分の気持ちに気付いていなかったというのには疑問が残る…。
それにしても、何で僕の中で仲村さんの記憶だけが消えてしまったのだろう?
他の事は何1つ忘れていないのに…
病院で検査しても、どこも異常はなかった。
仲村さんを目の前で亡くしてしまったショック性のものとも考えられる。
だとしても、仲村さんの事を何ひとつ思い出せないというのはおかしい。
「紺野…大丈夫か?」
日記を読んで深く考え込んでいると、突然松下に声をかけられた。
松下は僕が日記を読んでいる間、ベッドに腰掛け窓の外の景色を静かに眺めていた。
「ちょ‥ちょっと外の空気を吸ってきます…」
保健室を出て、向かった先は屋上だった。
仲村さんが僕の為に死んでしまったと聞かされた時から心に秘めていた事があった。
そして、仲村さんの日記を読んで決心が固まった。
せっかく救ってもらった命だけど、仲村さんのご両親、親友、彼女に携わってきた人達の事を考えると、何食わぬ顔をして生きて行く事なんて出来ない。
それに僕の一生をかけても仲村さんに償い切る事は出来ない。
だから…僕は間違った選択をしているかもしれないけど、死んで償おうと心に決めた。
1つだけ心残りなのは、亜季ちゃんとの事…。
亜季ちゃんの本当の気持ちを聞く前に逝ってしまうという事…。
屋上へ続く階段を上り、ドアを開けて外に出ると空は雲1つない快晴だった。
そして、校庭側のフェンスによじ登り、向こう側に降りた。
2歩進んで先端に立った。
仲村さん、ゴメンね…
今そっちに行くから…
「紺野さんっ」
僕を呼ぶ声の方に振り返ると、葵さんが息を切らして立っていた。
未来の映像を見て、慌てて走って来たに違いない。
「葵さん…よくここがわかりましたね?」
「“わかりましたね?”じゃないですよっ。何やってるんですかっ」
葵さんにしては、珍しく顔を真っ赤にして怒っていた。
「僕には、こんな事でしか償えないから…。葵さん、君の力になるって言ったのにゴメン…」
僕はそう言い終えると、前に向き直り目を閉じた。そして、そのまま一歩踏み出した。
1階の地面に向けて落ちて行った…
はずだった…。
ドンッ!?
次の瞬間…目に見えない空気の固まりのような物が、もの凄い勢いで僕にぶつかってきた。
その衝撃波で僕は後ろのフェンスに吹き飛ばされ、思いっ切り体を打ち付けた。
「いっ…いってぇ…‥」
フェンスと地面に叩きつけられた体は、直ぐには起き上がる事が出来なかった。
『パパ、ごめんなさい。衝撃が強すぎました。でも、今あなたに死なれたら困るから…』
「えっ!?」
どこからともなく若い女性の声が聞こえてきた。
この胸の奥底から込み上げてくる悲しみと切なさ、怒り、そして友達とは違う特別な感情…。
仲村さんの記憶を失う前の僕が、本当に自分の気持ちに気付いていなかったというのには疑問が残る…。
それにしても、何で僕の中で仲村さんの記憶だけが消えてしまったのだろう?
他の事は何1つ忘れていないのに…
病院で検査しても、どこも異常はなかった。
仲村さんを目の前で亡くしてしまったショック性のものとも考えられる。
だとしても、仲村さんの事を何ひとつ思い出せないというのはおかしい。
「紺野…大丈夫か?」
日記を読んで深く考え込んでいると、突然松下に声をかけられた。
松下は僕が日記を読んでいる間、ベッドに腰掛け窓の外の景色を静かに眺めていた。
「ちょ‥ちょっと外の空気を吸ってきます…」
保健室を出て、向かった先は屋上だった。
仲村さんが僕の為に死んでしまったと聞かされた時から心に秘めていた事があった。
そして、仲村さんの日記を読んで決心が固まった。
せっかく救ってもらった命だけど、仲村さんのご両親、親友、彼女に携わってきた人達の事を考えると、何食わぬ顔をして生きて行く事なんて出来ない。
それに僕の一生をかけても仲村さんに償い切る事は出来ない。
だから…僕は間違った選択をしているかもしれないけど、死んで償おうと心に決めた。
1つだけ心残りなのは、亜季ちゃんとの事…。
亜季ちゃんの本当の気持ちを聞く前に逝ってしまうという事…。
屋上へ続く階段を上り、ドアを開けて外に出ると空は雲1つない快晴だった。
そして、校庭側のフェンスによじ登り、向こう側に降りた。
2歩進んで先端に立った。
仲村さん、ゴメンね…
今そっちに行くから…
「紺野さんっ」
僕を呼ぶ声の方に振り返ると、葵さんが息を切らして立っていた。
未来の映像を見て、慌てて走って来たに違いない。
「葵さん…よくここがわかりましたね?」
「“わかりましたね?”じゃないですよっ。何やってるんですかっ」
葵さんにしては、珍しく顔を真っ赤にして怒っていた。
「僕には、こんな事でしか償えないから…。葵さん、君の力になるって言ったのにゴメン…」
僕はそう言い終えると、前に向き直り目を閉じた。そして、そのまま一歩踏み出した。
1階の地面に向けて落ちて行った…
はずだった…。
ドンッ!?
次の瞬間…目に見えない空気の固まりのような物が、もの凄い勢いで僕にぶつかってきた。
その衝撃波で僕は後ろのフェンスに吹き飛ばされ、思いっ切り体を打ち付けた。
「いっ…いってぇ…‥」
フェンスと地面に叩きつけられた体は、直ぐには起き上がる事が出来なかった。
『パパ、ごめんなさい。衝撃が強すぎました。でも、今あなたに死なれたら困るから…』
「えっ!?」
どこからともなく若い女性の声が聞こえてきた。