GIFT
聞いた事のない声だった…。

でも、今の声でわかった事もあった。

先程の衝撃波は自然現象による物ではなく、意図的に放たれた物だという事…。

にわかには信じられないけど、先程の声の女性によって放たれた物で間違いないだろう。

「紺野さんっ」

葵さんの声が聞こえたかと思った次の瞬間、横になっていた僕の体は抱きかかえられ、力いっぱい抱き締められていた。

「どうして死なせてくれないんだ…。死んで仲村さんに償いたいんだ…」

「仲村さんは、そんな事望んでなんかいません」

「どうして葵さんに、そんな事がわかるんですか?」

「わかります。だって仲村さんから、手紙を預かってますから…」

そして、葵さんから手紙を渡された。

「実はあの事故の数時間前に仲村さんから電話があったんです。
『もし私が死んでも、紺野くん…大丈夫ですよね?』
そう聞かれたんです。私は未来の話をするべきか迷いました。でも、仲村さんの必死の訴えに負けて、話す事にしました。
事故の後、紺野さんが仲村さんの記憶をなくしてしまう事…
紺野さんが自殺をしようとする事…
全てを話しました。
すると仲村さんは…‥
『紺野くんを助けて下さい。そして私が、これから書く手紙を紺野くんに渡して下さい』
そうお願いされました。
事故の翌日、学校に行くと私の下駄箱の中に仲村さんが書いた手紙が入ってました。
これが、その手紙です」

「仲村さんからの手紙…」

手紙を手に取ったけど、読むのが怖くて封を切る事が出来ずにいた。

「紺野さん…読んであげて下さい。仲村さんの想いが込められています」

読むのを躊躇っていた僕に、葵さんは背中を押してくれた。


【紺野くんへ

この手紙を読んでいるという事は、私はこの世にはいないと思います。

それに…私の事忘れちゃったみたいだね。

少し淋しい気持ちはあるけど全然平気…ではないかな…。

それよりも、どうして死のうとするの?

私への償いのつもり?

そんな事しちゃ絶対にダメだからね!

私は、そんな事をして欲しくて命をかけて紺野くんを助けた訳ではありません。

私は、紺野くんに生きていて欲しいから助けたんです。

それなのに死のうとするなんて…。

もし、私に償おうとする気持ちがあるなら生き続けて下さい。

生きて、いっぱい笑って…

喜んで…

楽しんで…

美味しいもの食べて…

時には悲しんで…涙を流して下さい。

そして素敵な恋をして、運命の人と結ばれて幸せな家庭を築いて下さい。

私の分まで最高の人生を送って下さい。

それが私の望んでいる事です。

紺野くんの命を救ったのは私からのGIFTです。

最後まで大切にして下さい。約束ですよ】
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