GIFT
「でも…あの子の言う事って意外に当たるんですよ。それに人から聞いた話なんですけど、あの子不思議な力を持っているみたいなんです」

茉奈ちゃんの母親が、冗談を言ってるようには見えなかった。

「何ですか不思議な力って?」

「私が直接見た訳じゃないんですけど、回りの人が言うには、テレパシーを使ったり、物を透かして見たり、物を動かしてみたり、人の居場所を言い当ててみたりと色々あるみたいなんです」

「すっ‥すごいですね」

「でも、信じられませんよね?私だって半信半疑なんですから…」

「僕は信じますよ。僕の身近な人にも、そういう不思議な能力を持った人がいますから…。だけど茉奈ちゃんみたいに、能力をいくつも持ってる人は極稀だと思います」

「そうなんですか…。すごいんですね茉菜は…。でも、私は茉菜には特殊な能力を持つより、健康で元気に外を走り回っていて欲しかった」

茉奈ちゃんの母親は流れる涙を指で拭っていた。

ふと葵さんを見ると、集中治療室の方を、ただ黙って見つめていた。

でも、口元が微かに動いており、何かを言っているようにも見えた。

そして葵さんの視線の先を追ってみると、ガラスの壁を隔てて茉奈ちゃんがベッドに寝かされていた。

口には酸素マスク、腕には点滴の針が数本刺さっていた。

ベッドの周辺には沢山の機械が置かれており、これによって何とか命を取り留めているに違いなかった。

こんなに幼い子供が、こんな痛々しい姿で苦しんでいると思うと胸がギュッと締め付けられた。

【おにいちゃん…そんなに気にしないで】

「えっ…誰?」

僕は辺りを見回した。

すると葵さんは、何か言いたげな表情で僕を見ていた。

でも…今のは人間の声というよりは、頭の中に直接話しかけられたような感覚だった。

テレパシーというヤツだろうか…

だとしたら、今のは茉奈ちゃん…

「もっ‥もしかして茉奈ちゃん?」

【うん、そうだよ。茉菜だよ】

僕は、茉奈ちゃんと僕らの間を隔てているガラスに両手をついて茉奈ちゃんを凝視した。

しかし茉奈ちゃんの口には酸素マスク、腕には点滴がされており、先程と何も変わった様子などなかった。

【茉菜はテレパシーでお兄ちゃんの頭の中に直接話しかけてるんだよ】

葵さんを見たが、茉奈ちゃんの母親と話をしていて茉奈ちゃんの声は聞こえていないようだった。

「茉奈ちゃんの声は他の人には聞こえてないの?」

【今はお兄ちゃんにしか聞こえてないはずだよ】
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