GIFT
信じ難いけど、今僕はベッドの上で眠り続けている茉奈ちゃんと話をしている。

それも、頭の中で…。

「茉奈ちゃっ…」

【お兄ちゃん…声に出さなくても平気だよ。でも、テレパシーは少し集中力が必要になるから慣れるまで時間がかかるかも。まずは頭の中で言葉をイメージして。それから、イメージした物を私にぶつけるような感じでやってみて】

「でも、葵さんは声を出してたけど…」

【葵お姉ちゃんは何回言っても出来ないの。生真面目で不器用過ぎなんだよ。能力者なのに…】

「そうなんだ。じゃあ、やってみるよ」

【あーあーぁー。どお? こんな感じでいいかな?】

【上手い、上手いっ。さすがお兄ちゃんっ】

【それより、葵さんが能力者だって事知ってるんだ?】

【そりゃあねぇ…あんな分かりやすい人いないから。普通、能力者どうしは相手に能力者だって悟られないように心にガードをかけたりするもんだけど、葵お姉ちゃんは全然してないんだよ】

【ガードする必要ってあるの?】

【当たり前だよ。私たちの能力を悪い事に利用しようとする人間だっているし、能力者の中には私たちみたいな能力を持った人間を消そうとする者だっているんだから…。それより葵お姉ちゃんが呼んでるみたい】

茉奈ちゃんの言葉で、後ろを振り返ると葵さんがムッとした顔をして僕を見ていた。

「ごっ‥ごめん…。聞いてなかった。何?」

「さっき茉奈ちゃんのお母さんが、着替えとか必要な物を取りに1度家に帰られました。用事が済んだら直ぐに戻るそうです。それまで大丈夫ですか?」

「僕は、全然大丈夫だけど」

「そうしたら私は廊下で待ってます。茉奈ちゃんとゆっくり話してあげて下さい」

葵さんは、そう言うと僕を1人残して病室を出て行った。

【葵お姉ちゃんて素敵な人だよね】

【僕もそう思うよ】

【葵お姉ちゃんは、ずっと孤独だったんだよ。能力者として生まれて、見たくもない未来をずっと見てきたの…それに未来を変えようと1人で戦ってきた。だから大切な人に自分だけを見ていて欲しい、自分だけを想っていて欲しいという感情は人一倍強いと思うの。だからさ…お兄ちゃんの全てで受け止めてあげてよ。お願いだから】

【・・・・・】

【ダメなの?】

【そんな事はないけど…】

【男ならしっかりしてよ】

【そう言われても…簡単な問題じゃないんだよ】

【はぁ…】

茉菜ちゃんは僕のハッキリしない態度に深い溜息をついていた。

【お兄ちゃんてさ、茉菜が想像していた人とちょっと違うんだよね。葵お姉ちゃんの運命の人って言うくらいだから、もっと男らしくて優しい感じの人なのかと思ってた】

【違うかな?】

【違うんだよなぁ…】

【自分ではそれなりに男らしいと思うし、優しいと思うんだけど…】
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