GIFT
【それは、わかるんだけどさ…男は時に強さや決断力が求められるんだよ。今のお兄ちゃんにはそれが欠けてると思うの】

【それは自分でもわかってる】

【年齢と経験を重ねていくうちに、自然と身に着けていくから大丈夫だよ】

年端も行かぬ小学生の茉奈ちゃんに慰められてる僕って…

【それより僕が葵さんの運命の人って話だけど、何か知ってるの?】

【ホントに何も知らないんだ?でも、言っちゃっていいのかな?いいよね?別に口止めされている訳じゃないし】

【何か聞いちゃって良いものなのか不安になってきたよ…】

【大丈夫でしょ。でも、聞いたら今まで通りにって訳にはいかないと思うよ。未来を知るって事は、未来を変えられる可能性が生まれるってことだからね。そして未来を変えたら、大きな反動と、正しい未来に戻そうとする修正力が働くの。世界がひっくり返るくらいのエネルギーが働くから、ただでは済まないと思う。だから覚悟して聞いてね】

【わかった】

【それじゃあ話すよ】

【うん…】

【お兄ちゃんと葵お姉ちゃんは結婚して夫婦になるんだよ】

結婚?

未来の葵さんの隣に僕がいるっていうのは、わかっていた事だけど、結婚だなんて…。

【僕と葵さんが結婚?】

【そうだよ。2人は結婚するの。良かったね】

【まっ‥まぁ…】

【全然嬉しそうじゃないね?】

【そんな事はないよ。突然言われたから驚いているんだよ】

【ならいいんだけど。でも、未来を知ったんだから、未来は変えられる可能性が生まれたね。色んな選択肢が出来たんだから、真剣に考えないといけない時が来るかもね】

【もしかして茉奈ちゃんにも未来を見る能力が?】

【私には、そんな能力ないよ。葵お姉ちゃんが見ている未来の映像をたまたま読み取っちゃったの…】

【だとしたら100%に近い確率でそうなる?】

【何もしなければ未来通りになるだろうね。何もしなければだけど…。でも、葵お姉ちゃんがお嫁さんなら文句はないでしょ?】

【ないけど、僕には…】

【好きな人がいるんでしょ?でも、諦めなよ。その方がお兄ちゃんも葵お姉ちゃんも傷つかなくてすむよ。葵お姉ちゃんだけを見てあげなよ。それに葵お姉ちゃん…お兄ちゃんに好きな人がいる事もわかってるし、亡くなった仲村さんに惹かれていた事もわかってるよ】

【茉奈ちゃん…ホントに小学生?言葉遣いもしっかりしてるし、常識的な事も考え方も大人並…嫌それ以上だよ…】

眠り続けている茉奈ちゃんを見たけど、この子と話しているとはとても思えなかった。

【ありがとう。大人っぽいってよく言われる】

【そうでしょう。それより茉奈ちゃんと話していると、とても病人とは思えないんだけど…怖くないの?】

【死ぬこと?】

【そっ‥そうなんだけど…‥とってもストレートだね】

【怖いに決まってるじゃん】

【だよね】

【てもね、死んだら人は生まれ変わるんだよ。だから怖いけど怖くない】

【そんな事信じてるの?】

【信じてるも何も、私何度も生まれ変わってるもん。前世の記憶もしっかり憶えてるし】

【・・・・・。ちょっと笑えないジョークだね】

【誰もが再生転生を繰り返してるんだよ。でも、殆んどの人が生まれ変わると前世の記憶はなくなっちゃうけどね。私はそれでいいと思うんだ。だって生まれ変われるってわかってたら人間は一生懸命生きようとしないもの。一生に1度の人生だと思うから頑張っていけるんだと思う。私は特殊みたいで、忘れずにずっと憶えてるけどね…』

【・・・・・】

【信じられないでしょ?】
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