GIFT
カーナビも使わずに、迷う事なく僕を家まで送り届けてくれた。

「よく僕の家がわかりましたね?」

「この辺は学生の時によく来たの。何度も何度も足を運んだわ」

「なるほど…。どうりで迷わず来れた訳ですね」

学生の時か…

店もない住宅街に何しに来ていたのだろう…

友達の家がこの辺にあったんだろうか?

「着いたわよ」

「すいませんでした。家まで送ってもらっちゃって」

「いいのよ、気にしないで」

「紺野くん…」

「何ですか?」

「うぅん…何でもない。じゃあ、またね」

遠藤さんは何か言いたげな顔をして僕を見ていた。

「またね…おやすみなさい」

「ありがとうございました。気を付けて帰って下さい」

遠藤さんには会う度にいつも癒されるが、今日はいつもと様子が違うような気がした。

言葉にするのは難しいが、今日の遠藤さんは何かを胸に秘め、自分の気持ちを押し殺しているように見えた。

一体何なんだろう?

「葵さん、また明日…」

「えぇ…」

葵さんは、カラオケ店を出てから1度も口を開く事なく、ずっと黙っていた。

怒っているようだった。

もしかしたら僕と遠藤さんのキスを見てしまったのかもしれない。

家の中に入り、自分の部屋のベッドで横になっていると色んな事が脳裏をよぎった。

茉奈ちゃんの容態…

葵さんの先程の態度…

葵さんの傍にいる能力者…

遠藤さんの何かを隠しているようなあの態度…

考えれば考えるほど頭が痛くなる。

時間が経つにつれ、いてもたってもいられなった僕は、気付くと葵さんに電話をかけていた。

『もしもし…紺野です。もう家に着きましたか?』

『先程着きましたけど、どうかしました?もしかして私の態度を気にして?』

『そっ‥それもあります。それに茉奈ちゃんの事も気になったので…』

『私のさっきの態度は謝ります。ただの私の妬きもちです。嫉妬です』

『見ちゃったんですか?』

『見たくて見た訳じゃありません』

『違うんです。あれは…』

『わかってます。事故だったって事は…わかってるんですけど、胸の辺りがムシャクシャして自分を抑える事が出来なくなってしまうんです』

『葵さん…』

『ちっ‥違いますよ。変な風に解釈しないで下さい。そんなんじゃありませんから…。私はただ、紺野さんの事が頭から離れなくて…気付くと紺野さんの事ばかり考えて…苦しくて…切なくて…会いたくて仕方ないんです…。ただそれだけです』

『・・・・・』

これって告白と受け取っていいのだろうか?

それとも、告白してるって事に気付いていないのか?

僕は何て答えたらいいのかわからず、しばらく黙っていた。

『ごめんなさい。私、変なことばっかり言ってますよね…』

『大丈夫です』

『わかってて言いました』

『えっ…何でそんな事を?』
< 78 / 194 >

この作品をシェア

pagetop