GIFT
それから数日後…

茉奈ちゃんは病院を退院し、自宅に帰る事が出来た。

未だに信じられないが、本当に奇跡が起こってしまった。

未来を変えてしまった…。

数十年後の未来から届けられた薬…

それを茉奈ちゃんの元に届けた葵さんと僕…

そして、茉奈ちゃんを蘇らせた黒いコート姿の人物…

色んな人の力を借りて、この奇跡が生まれた。

それに、何よりも茉奈ちゃんに生きて欲しいと願った両親の愛と、生きたいと強く願った茉奈ちゃんの思いが奇跡を起こし未来を変えた。

未来は、変えたいという強い意思と努力によって幾らでも変えられるのかもしれない…。

それなら、僕と葵さんと亜季ちゃんの未来も…。

そんな事を考えながらも、結局何もする事が出来ずに月日ばかりが過ぎていった。



あと数ヵ月で高校2年生という時間は終わりを迎えようとしていた。

そんな中、妙な噂が僕の耳に入ってきた。

それは亜季ちゃんが、父親のいる外国に帰国するというものだった。

僕は真偽を確かめる為、亜季ちゃん本人にではなく葵さんに聞く事にした。

それもどうかとは思ったけど、亜季ちゃんと僕の関係を考えると、葵さん以外にあてがなかったので止むを得なかった。



昼休み…

僕は校舎の屋上に葵さんを呼び出していた。

ひと気のない落ち着いた場所で話を聞きたかったからだ。

そして、僕が来てから然程待たずに葵さんもやって来た。

「すいません…呼び出しちゃって」

「それは別にいいんですけど、聞きたい事って何ですか?やっぱり亜季ちゃんの事ですか?」

「えぇ、まぁ…帰国するって噂で聞いたんですけど本当ですか?」

「本当です。1週間後には出発するって言ってました」

「止めなかったんですか?」

「もちろん止めました。でも、亜季ちゃんは1度決めたら絶対に意見を曲げない人だから諦めました」

「理由は?」

「私にはわかりません。直接本人に聞いてみたらどうなんですか?」

「そりゃそうだよね…。それに、こんな事を葵さんに聞くなんて無神経過ぎたよね。ゴメン…」

「べっ‥別に、気にしてません…」

「・・・・・」

気にしてない訳がなかった。

「あっ…そうだ。紺野さん、今日学校が終わったら駅の近くの公園で会えませんか?」

「いいですけど…何ですか?」

「会ってからでも、いいですか?」

「いいですけど…」

学校ではなく、わざわざ公園で会おうなんて一体何の用だろう?

「それじゃあ、その時に…」

「はい…」

僕は葵さんが悲しそうな顔をした、その一瞬を見過ごさなかった。
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