GIFT
そう言い終えた直後、亜季ちゃんは僕の胸に飛び込んできた。
そして僕の胸の中で思い切り泣いていた。
こんな亜季ちゃん初めてだった…。
僕は、亜季ちゃんの体に腕をまわして強く抱きしめた。
「亜季ちゃん…“許されない”っていうのは、未来で僕と葵さんが結婚するからですか?」
「・・・・・」
亜季ちゃんは何も言わず頷いた。
「未来では、そういう事になってるのかもしれないけど、僕たちは今を生きてる。決められた未来の為に生きている訳じゃない。例え未来が変わってしまったとしても、それは今の僕たちが生きて繋いでいく未来…。誰も責める事は出来ないはず…」
すると今度は亜季ちゃんは、黙って首を横に振っていた。
「どうして?」
「もし…新しい命が誕生するとしてもですか?」
「新しい命…もしかして、僕と葵さんの子供って事?」
亜季ちゃんは頷いていた。
「そんな…」
その言葉は、亜季ちゃんから言われたどんな言葉よりも残酷なものだった。
「でも、葵さんの能力だって間違える事だってあるかもしれないじゃないですか?」
今まで見てきたけど、葵さんの能力の正確さ、的中率はほぼ100%に近く、疑いの余地がない事はわかっていた。
「わかってるなら、未来を受け入れて下さい」
「でも僕は…」
亜季ちゃんを失いたくない…。
「ありがとうございます。私だって瑛太さんと同じ気持ちです」
僕は亜季ちゃんの体にまわしていた腕をゆっくりと離した。
「瑛太さん…」
「亜季ちゃん…」
もう…諦めるしかないと思った。
僕と亜季ちゃんだけの問題なら未来は変えてもいいと思っていた。
でも、そんな簡単なものではなかった。
僕と葵さんが結ばれなかった事によって、生まれるべき生命が誕生する事がなくなってしまったら…
未来永劫へと繋がっている未来がなくなってしまう。
そして、これから誕生していく何十何百もの生命が、誕生しない未来を作ってしまう事になる。
そんな事が許される訳はない。
つまり今僕が考えている事は、亜季ちゃんがずっと以前から考えていた事…
僕は長い月日をかけて、ようやくそこに辿り着いたのだ。
それと同時に、今までどうして亜季ちゃんが僕と結ばれる事を拒否していたのかが、ようやくわかった。
酷いと思っていた亜季ちゃんの言葉の重みを理解できた。
好きだけど好きって言えない…
一緒にいたいけど一緒にいられない…
恋人になりたいけど恋人になれない…
そんな気持ちの葛藤と狭間で苦しんでいたに違いない。
もしかしたら僕は亜季ちゃんに、苦しみしか与えられなかったのかもしれない。
「そんな事ないです。一緒にいられた時間は幸せだったし、本当に楽しかった」
「亜季ちゃん…」
真実を知ってしまった以上、僕も亜季ちゃんと同じ選択をしなければならないと思った。
「ありがとうございます。その決断が、いかに辛く苦しいかは私には痛いほどわかります」
すると亜季ちゃんは、一歩一歩後ずさりをしながら僕から離れて行った。
「亜季ちゃん…」
「瑛太さん、さよなら…」
「・・・・・」
「瑛太さん…笑顔でサヨナラしましょう」
「亜季ちゃん…」
そんな簡単に割り切れるほど、僕は強くはないし素直でもなかった。
僕は亜季ちゃんの腕を掴み、僕の胸にたぐり寄せた。
そして、間髪いれずに亜季ちゃんの唇にキスをした。
何故だろう…亜季ちゃんは何の抵抗もしなかった。
きっとこれが最後のキスになるとわかっていたからなのかもしれない…。
もう2度と亜季ちゃんとは会わない…。
僕はそう心に誓った。
その日は19時くらいから雨が振りだしていた。
まるで涙の出ない僕の代わりに泣いてくれているようだった。
夕食を食べ終え、フロに入っていると脱衣場から僕を呼ぶ母さんの声が聞こえた。
「瑛太、電話よ」
「えっ…誰から?」
「名乗らなかったからわからないけど、可愛らしい女の子の声よ…」
そして僕の胸の中で思い切り泣いていた。
こんな亜季ちゃん初めてだった…。
僕は、亜季ちゃんの体に腕をまわして強く抱きしめた。
「亜季ちゃん…“許されない”っていうのは、未来で僕と葵さんが結婚するからですか?」
「・・・・・」
亜季ちゃんは何も言わず頷いた。
「未来では、そういう事になってるのかもしれないけど、僕たちは今を生きてる。決められた未来の為に生きている訳じゃない。例え未来が変わってしまったとしても、それは今の僕たちが生きて繋いでいく未来…。誰も責める事は出来ないはず…」
すると今度は亜季ちゃんは、黙って首を横に振っていた。
「どうして?」
「もし…新しい命が誕生するとしてもですか?」
「新しい命…もしかして、僕と葵さんの子供って事?」
亜季ちゃんは頷いていた。
「そんな…」
その言葉は、亜季ちゃんから言われたどんな言葉よりも残酷なものだった。
「でも、葵さんの能力だって間違える事だってあるかもしれないじゃないですか?」
今まで見てきたけど、葵さんの能力の正確さ、的中率はほぼ100%に近く、疑いの余地がない事はわかっていた。
「わかってるなら、未来を受け入れて下さい」
「でも僕は…」
亜季ちゃんを失いたくない…。
「ありがとうございます。私だって瑛太さんと同じ気持ちです」
僕は亜季ちゃんの体にまわしていた腕をゆっくりと離した。
「瑛太さん…」
「亜季ちゃん…」
もう…諦めるしかないと思った。
僕と亜季ちゃんだけの問題なら未来は変えてもいいと思っていた。
でも、そんな簡単なものではなかった。
僕と葵さんが結ばれなかった事によって、生まれるべき生命が誕生する事がなくなってしまったら…
未来永劫へと繋がっている未来がなくなってしまう。
そして、これから誕生していく何十何百もの生命が、誕生しない未来を作ってしまう事になる。
そんな事が許される訳はない。
つまり今僕が考えている事は、亜季ちゃんがずっと以前から考えていた事…
僕は長い月日をかけて、ようやくそこに辿り着いたのだ。
それと同時に、今までどうして亜季ちゃんが僕と結ばれる事を拒否していたのかが、ようやくわかった。
酷いと思っていた亜季ちゃんの言葉の重みを理解できた。
好きだけど好きって言えない…
一緒にいたいけど一緒にいられない…
恋人になりたいけど恋人になれない…
そんな気持ちの葛藤と狭間で苦しんでいたに違いない。
もしかしたら僕は亜季ちゃんに、苦しみしか与えられなかったのかもしれない。
「そんな事ないです。一緒にいられた時間は幸せだったし、本当に楽しかった」
「亜季ちゃん…」
真実を知ってしまった以上、僕も亜季ちゃんと同じ選択をしなければならないと思った。
「ありがとうございます。その決断が、いかに辛く苦しいかは私には痛いほどわかります」
すると亜季ちゃんは、一歩一歩後ずさりをしながら僕から離れて行った。
「亜季ちゃん…」
「瑛太さん、さよなら…」
「・・・・・」
「瑛太さん…笑顔でサヨナラしましょう」
「亜季ちゃん…」
そんな簡単に割り切れるほど、僕は強くはないし素直でもなかった。
僕は亜季ちゃんの腕を掴み、僕の胸にたぐり寄せた。
そして、間髪いれずに亜季ちゃんの唇にキスをした。
何故だろう…亜季ちゃんは何の抵抗もしなかった。
きっとこれが最後のキスになるとわかっていたからなのかもしれない…。
もう2度と亜季ちゃんとは会わない…。
僕はそう心に誓った。
その日は19時くらいから雨が振りだしていた。
まるで涙の出ない僕の代わりに泣いてくれているようだった。
夕食を食べ終え、フロに入っていると脱衣場から僕を呼ぶ母さんの声が聞こえた。
「瑛太、電話よ」
「えっ…誰から?」
「名乗らなかったからわからないけど、可愛らしい女の子の声よ…」