GIFT
「体に悪い所は見られなかった。精神的に何か強いショックを受けたんじゃないのか?例えばお前が浮気でもしてるのを知ってしまったとか?」

「僕を、そんな風に見てたんですか?」

「違うのか?」

「違いますよ」

「それより彼女は一体何者なんだ?」

「どういう意味ですか?」

「医療機器で彼女の体を検査しようとしたが、調べられなかった。機械が彼女の体に反応しなかったんだ。そこでワシは考えたんだ。彼女は外からは眠っているように見えるが、実は脳はずっと起きている状態にあるんじゃないかと考えた。そして彼女を完全に眠らせる為に注射をしようとしたんだ。そしたらこのザマだよ…」

大橋先生は、そう言うと白衣の袖を捲りあげた。

すると腕には包帯が巻かれていた。

「どうしたんですか?」

「注射を打とうとした瞬間注射器が破裂して、飛んできたガラスの破片でやっちまったんだ。まるで何か得体の知れない力で体を守られているようだったよ…」

「・・・・・」

能力者の自己防衛機能が働いての事だというのは、直ぐにわかった。

「何か知ってるなら言え」

「ぼっ‥僕はしりま…せん…」

「隠しておくとためにならんぞ。今は気を失っているだけだからいいようなものだけど、何か病気にかかった時どうするんだ?」

「それは…」

「取り返しのつかなくなる前に言っとくんだ。それが彼女のためなんだ」

「言っても信じてもらえませんよ」

「そこら辺のバカ連中と一緒にするんじゃない。ワシは何でも受け止められる経験と度量は持ってるつもりだ。だから、さっさと言うんじゃ」

「あっ‥葵さんは能力者なんです…」

口が悪く汚らしい人だけど、唯一信頼できる医者の先生だった。

「能力者?何か特別な事が出来るのか?」

「予知能力を持っています。その他にも幾つか能力を持ってるみたいです…」

「なるほど…」

大橋先生は、口髭を触りながら何か考え事をしながら頷いていた。

「納得したんですか?」

「当たり前だろ。ワシは医者ではあるが、目に見えない物を信じないような偏った思考は持ち合わせてねぇよ」

「それを聞いてどう思いましたか?」

「面白いじゃないか。昔は魔女とか巫女とか呪術師しとかいたし、今だって霊能力者や占い師、占星術師がいるんだから、特別な能力を持った人間がいたとしてもそんなにおかしな事ではないだろ」

やっぱり、この人は変わっている。

と言うより変人だ。

「おいっ、何だお前のその目は?ワシを変わり者だと思ってるだろ?」

「いえっ…そんな滅相もない…」

なかなか鋭いな。

「まぁいい。それより、彼女の目が覚めたら帰っていいぞ。ただし、またどこか調子が悪くなったら、直ぐにワシの所に連れて来い。他の医者には、絶対に理解できねえ世界だ。彼女はワシにしか見られん」

「わかりました」

それから1時間くらいして、葵さんは目を覚ました。
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