離婚前提から 始まる恋
「花音、顔色悪くないか?」

なかなか食事が進まず、お味噌汁に口をつけたまま手の止まってしまった私に、勇人が聞いてきた。

「少し疲れは残っているけれど、大丈夫よ」
「本当に?」
勇人は疑わしいぞって表情で見つめている。

本当はかなりつらい。
でも、ここで言えば「会社を休め」って言われてしまうし、それは避けたい。

「大丈夫よ。選挙が終わって気が抜けただけだと思うから」
「無理せずに、辛かったらすぐに言うんだぞ」
「はいはい」
これ以上抵抗すればもめそうで、頷くしかなかった。

「絶対だぞ」
ギロリと睨む目はいつもよりも鋭い。

元々、勇人は彫りの深い精悍な顔立ちをしている。その上身長も185センチと大きいためで、私はてっきりご両親のどちらかが外国の方なんじゃないかと思っていた。けれど、実際お目にかかったご両親は純和風の顔立ちで逆に驚いたくらいだ。
そんな勇人だからかもしれないけれど、眼光がかなり強め。
その上あまり社交的に笑ったりするタイプではないから、周囲には怖い印象を与えてしまうらしい。
実際、『強面で、笑わない、仕事のできる御曹司』それが世間に浸透した勇人のイメージになっている。
もちろん勇人自身もそのことを承知しているはずだけれど、あえて否定しないところを見ると、自分で望んで演出している部分もあるのだろう。
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